新春特集=2025年の原油相場を振り返る、想定外の材料多し
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2025年の原油相場で注目された材料やイベントを振り返り、2026年相場をどう見るか。金融機関やシンクタンクのアナリスト6人、さらに独立系アナリストなど、多様な専門家の見方をまとめた。 2025年の原油相場について、複数のアナリストは「おおむね想定内の値動き」とまとめている。ただ、「想定外の出来事も多い」との見方が複数示された。想定外の材料として、OPECプラスの増産拡大、ウクライナ情勢や中東などを巡る地政学リスク、さらにトランプ政権による関税発動などが挙げられた。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は、地政学的要因や通商摩擦の影響を受け、「原油相場は乱高下が続いたが、変動幅は異常とまでは言えず、市場参加者は冷静に対応した」とみる。同氏によると、予想レンジはおおむね想定内だったものの、OPECプラスの増産ペース、米通商政策の影響、米軍によるイラン空爆など、想定外の材料を織り込んだ相場の変動要因は予見できなかったという。 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストは、乱高下する場面が見られつつも、「概ね範囲内での変動であり、上下動の持続的傾向は見られなかった」とまとめた。ただ、当初見込んだ価格変動領域からは下振れしたという。ウクライナとロシアとの戦闘継続に加え、米国トランプ大統領による関税政策および米国金融当局に対する政策金利引き下げ要求、さらに米国のイランに対する圧力は見込みどおりの展開だったが、OPECプラス産油国の大幅な増産、米国トランプ大統領によるイランに対する最大限の圧力でも、「イラン原油の生産量が殆ど減少しなかったことが下振れ要因となった」と振り返る。 25年度の原油相場は方向感を欠いたとの声も散見された。ニッセイ基礎研究所の上野剛士主席エコノミストは、トランプ関税やOPECプラスの減産縮小、ウクライナとイランの地政学リスクなど、需要と供給両面で大きな材料が多発し、「予測の難しい要因が重なった1年だった」とまとめた。年間の値動き幅はほぼ予想どおりだったものの、「平均的な価格水準は想定していたよりもレンジの下限寄りだった」と指摘した。最も予想外だった出来事として、「OPECプラスが急速な減産縮小を続けたこと」を挙げ、これにより価格が想定以上に軟化したと分析した。さらに、予想を大きく上回る規模で発動されたトランプ関税、イスラエルと米国によるイラン核施設への直接攻撃も想定外の出来事だったと語った。 一方、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表は、緩やかな景気回復の中で春先から価格が上昇するとみていたものの、トランプ関税の影響で経済活動が実質9カ月間程度停止したため、「景気が減速して価格水準が切り下がった。関税政策の影響の大きさを実感した1年」と総括した。続けて「景気後退懸念で原油市況は下落するとみていたが、その後はほとんど当たっていない」と苦笑い。トランプ関税の影響がことのほか大きかったほか、イスラエルが暴発したことも想定外の出来事だったようだ。 野村證券の高島雄貴エコノミストは、2024年9月から3度の延期を経て、OPECプラスによる自主減産の巻き戻し増産がようやく2025年4月1日から開始、加えて3日には追加の緊急増産も決定され、「先行きの需給が緩みやすいとの見方が広がった」という。続けて、OPECプラスが自主減産の巻き戻し増産を4月に加速させたのは想定外としながらも、「増産方向という点やそれによる供給過剰と原油価格に対する下押し圧力が続く点は合致した」とまとめた。 また、有事の際にはOPECプラスが即時に増産を決定でき得るとの見方にも繋がり、6月のイランとイスラエルの情勢緊迫化でもWTI原油相場は2025年1月につけた80.77ドルを上回ることはなかった。それ以降もOPECプラスの増産および米政権による関税引き上げ等による先行きの景気弱含み懸念を受け、「原油価格は下落基調となった」と分析した。 楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは、「想定レンジの下限をやや下回った」と振り返る。当初予想よりも少しだけ弱かったものの、それでも大きく崩れることはなかったとまとめた、WTI原油相場は当初60~100ドルと想定したが、実際にはおおむね55~80ドルで推移。下落材料が複数あった中で、「下値を維持しながら健闘したと思う」と総括した。 全体としては、トランプ関税、米国利下げ、OPECプラス、ウクライナ戦争および中東情勢など、複数テーマそれぞれから時期を変えて上昇あるいは下落圧力が絶えずもたらされていた1年とし、「上下圧力が継続して相場に織り込まれたため、大規模な急騰も急落も生じなかった」とまとめた。 一方、相場が読めなかった材料として、トランプ関税のマイナス面の影響を挙げた。4月は相場全体が「ショック」に冠される急落に見舞われ、2017年~2020年のトランプ政権1期目のように関税政策は米中間で激しくせめぎ合うことが想定されたが、実際は多くの国を巻き込んだ相互関税という形になり、1期目に比べてマイナス面がより大きくなったという。このことがトランプ関税導入による世界景気の悪化懸念、関税導入に伴う米国国内のインフレ再燃懸念をきっかけに、「利下げの思惑後退による米国景気の悪化懸念など下落圧力を強めた」と指摘した。もともと米国は2024年から利下げの議論が進行し、「利下げ→資金調達しやすくなる→景気回復→需要増加」というシナリオの期待感が広がっていたものの、相互関税の導入により市場の期待が懸念に変わったことで、「下落圧力が大きくなった」と分析した。
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