新春特集=2026年の原油相場を読む、その2 原発稼働や天然ガスに関心
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2026年をどう見るか その2。 金融機関やシンクタンクのアナリスト6人、さらに独立系アナリストなど、多様な専門家の見方をまとめた。原油相場に関わる注目材料を探る。 複数アナリストは「原発稼働」を関心事に挙げた。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表は、LNG輸出が増加して原油価格が下落しているなか、AIやデータセンター向け電力需要は増加しているとし、「市場が期待しているほどの原油供給が過剰になるか否か。日中関係が悪化する中、原発の稼働状況も重要になる」との見方を示した。足元では柏崎刈羽原発の再稼働が容認され、早ければ3月末までに同6号機(定格出力135万6,000kW、ABWR型)が再稼働する可能性がある。 さらに、北海道電力の泊原発3号機(定格出力91万2,000kW、PWR型)も再稼働が容認された。西日本の原発比率が高いなか、東日本の原発稼働に向けた動きが活発化している。 楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは、「太陽光発電を巡る議論」と語る。特に太陽光パネルの設置について、国内でも大きな関心事で、賛否両論の議論がある。「脱炭素」を加速させるべく、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料に頼らない発電が求められており、再生可能エネルギーを生み出す太陽光パネルの重要度は高い。設置にあたり広大な自然を開拓する必要があるため、環境破壊の進行が懸念され、生態系の混乱にも対応しなければならないという。 また、設置した太陽光パネルから銅線などの金属を盗む金属盗への対策も早急に行うことが必要とした。「太陽光パネル設置のデメリットを補うべく、日本では原子力に回帰する動きが少しずつ出始めている」という。従来の大型原子炉への回帰だけでなく、主要国では安全性のより高い小型原子炉の開発、運用も進み始めている。2026年は日本のみならず主要国で太陽光パネルの設置が加速するか、代替手段に移行するか、太陽光パネルをめぐる議論が活発化する可能性がある。この議論は、「期間や手法を限定した『部分的な化石燃料回帰』に至る可能性もあり、注目している」と結んだ。 さらに、主に「天然ガス(LNG)相場」に関心があると複数アナリストは指摘する。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストは、既にカナダでLNGカナダ、米国でプラークミンズ及びコーパス・クリスティ(拡張)各天然ガス液化施設からのLNG供給が開始されつつあるとし、2026年に米国ゴールデンパス、豪州プルート2、カタールLNG拡張等の各天然ガス液化施設からのLNG出荷が開始されるものと見られるため、「世界的にLNG需給緩和感が強まるとともに、LNG価格が下落する可能性がある」とみる。結果として、「暖房や産業面で競合する暖房油(Heating oil)の需要及び価格が抑制されるとともに、それが原油相場に影響する可能性がある」と指摘した。 さらに野神氏は米国天然ガス生産にも言及。米国からのLNG輸出活発化に従って、米国天然ガス需給引き締まり感が発生するとともに、国内天然ガス価格が上昇する可能性があるとし、「どのくらい迅速に米国内の天然ガス生産が拡大できるか、もしくは発電部門で天然ガスと競合する石炭需要が増大することでどの程度天然ガス需要が抑制されるか」が注目されると付け加えた。 そのほか、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「中国の備蓄動向、米シェールオイルの生産動向など」、野村證券の高島雄貴エコノミストによる「EU(欧州連合)諸国の脱ロシア産エネルギー目標に関し、どの程度の度合いで履行されていくかに注目」との声もあった。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は、26年度も地政学リスクが相場を左右するとし、一時に比べて緊張は緩和しているが、「ウクライナ、中東、ベネズエラなど地政学リスクは引き続き燻ってといる。米中対立も一時に比べれば緩和しているが、予断は許さないであろう」と述べた。続けて「米中の景気は減速が見込まれるものの、底堅さを保ち、OPECプラスは春以降再び増産意欲をみせる」と予想した。 野村證券の高島雄貴エコノミストは、26年のWTI価格を「50~70ドルのレンジで推移」と予想する。特に25年4~5月につけた55ドルをした抜けするかが焦点になるという。1~3月のOPECプラス増産停止は季節要因によると説明されており、4月以降に増産再開となる公算が大きいことを踏まえると、「WTI原油相場は上半期に50ドル台前半まで下落する可能性がある」とした。 ただ、米シェールオイルの損益分岐点はWTI原油相場60ドル程度であり、60ドルを下回ると米シェールオイルの生産量が伸び悩むことで需給調整が進むという。このため、「WTI原油相場が60ドルを下回って安定的に推移するわけではないだろう」と述べた。 一方、トランプ政権がエネルギー価格の引き下げを目的とし、石油産業などへの補助金や減税策を講じることとなった場合には、事実上の損益分岐点の低下に繋がり得るため、「原油価格の下落が加速する可能性に注意を要する」と警戒感を滲ませた。 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之首席エコノミストはWTI原油価格を60~70ドル、ブレント原油価格を65~75ドルと予想した。ただ、原油価格が上昇しすぎた場合、米国消費者の不満が高まる可能性があり、支持率が低下する恐れがあるため、「トランプ大統領がOPECプラス産油国に対する増産圧力を強化するなど、原油価格抑制を図るのではないか」とした。 一方、原油価格が下落しすぎた場合、米国石油産業の不満を買うことによりトランプ大統領の支持率が低下する恐れがあるため、金融当局に対する政策金利引き下げ圧力の強化等で原油価格の回復を図る可能性がある。「原油価格は強弱双方の圧力に挟まれ、範囲内での変動となり、上昇もしくは下落の持続的傾向は創出しにくい」とも分析した。 また、野神氏は2026年の原油先物相場を見るうえで注目している材料を挙げた。 ① ウクライナとロシアの戦闘状態 ② 中東情勢 ③ 南米情勢 ④ 米国パウエルFRB議長の後継候補選出と米国金融当局の政策金利の取り扱い動向 ⑤ 米国と中国を初めとする貿易相手国および地域との間での関税の賦課状況 ⑥ OPECプラス産油国(特にサウジアラビアとロシア)の増減産を巡る動き ⑦ 米国原油生産状況特に原油価格が低水準にもかかわらず経営、操業改善努力によりシェールオイル等の開発・生産活動が活発化するかどうか ⑧ 米国中間選挙結果とトランプ大統領の対応
野神氏によると、特にロシアのエネルギー供給関連インフラに対するウクライナの攻撃をはじめ、西側諸国などによる対ロシア制裁(中国およびインド等の対応も含む)やウクライナとロシアの和平案を巡る仲介者の米国動向などが警戒されるという。さらに、パレスチナ自治区ガザ地区等を巡るイスラエルとハマス等対抗勢力との対立状況、米国とイランとの対立状況、ペルシャ湾におけるイランのタンカー拿捕、イランが支援しているとされるイエメンのフーシ派武装勢力のイエメン周辺海域等における船舶やイスラエルに対する攻撃なども引き続き懸念材料となるとした。 なお、南米情勢としては、米国とベネズエラとの対立状況、特に米国のベネズエラへの攻撃の可能性があるという。 楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストはWTI原油価格を50~90ドル、ブレント原油価格を54ドル~94ドルと予想し、強気との見方を示した。想定している上昇要因を以下に挙げた。 ① 米国の利下げ推進による景気回復期待 ② 利下げ推進をきっかけとしたドル安 ③ ウクライナ戦争および中東戦争の懸念継続 ④ トランプ大統領によるベネズエラ、イランなど敵対産油国への制裁強化 ⑤ OPECプラスの自主減産縮小の終了 ⑥ OPECプラスの協調減産の延長決定 ⑦ ブラジルなどの協力憲章配下の産油国が協調減産に参加する可能性があること
吉田氏によると、利下げ観測の後退、ウクライナ戦争や中東情勢が和平に向かった場合など、原油上昇要因に挙げた材料が逆の意味を持つ可能性も出てくるという。特に11月の中間選挙に向け、トランプ大統領は景気回復および株高を演出する可能性が高く、「FRBに対して一段と利下げの圧力をかける可能性がある」と指摘した。 さらに、2014年に併合されたクリミア半島を含む領土の完全奪還を目指すウクライナと、2022年の軍事侵攻後に占領した領土の一部を割譲することを和平の条件とするロシアの間で意見がまとまらない場合、「ロシア産原油の流通が制約を受けた状態が続くことを意味する」とみる。ロシアとウクライナとの緊張関係が原油相場に依然として大きく影響するとした。 また、2026年末までとなっているOPECプラス協調減産の期限を2027年末まで延長する可能性があるという。IMF(国際通貨基金)はOPEC盟主サウジアラビアの財政収支が均衡するために必要な原油価格は90ドル前後と試算している。このため、現在の原油水準を長期間放置することはできないとし、「原油価格上昇をもたらし得る協調減産を延長する必要がある」と睨む。6月前半と11月あるいは12月の合計2回、OPECと非OPEC閣僚会議が開催される予定だ。JMMCが勧告すれば臨時に閣僚会議を実施する場合もある。2026年のいずれかのタイミングで2027年も協調減産を続ける可能性があるとした。 OPECプラスに属しているが、協調減産に参加していない「協力憲章」配下のイラン、リビア、ベネズエラ、ブラジルのうち協調減産に動く可能性が高い国はブラジルとした。「協調減産延長と同時にブラジルの協調減産開始となれば、原油需給の引き締まりもあり得る」と総括した。(了) |



