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2025年の石油化学業界は前年に続き、中国を中心とした新規設備の稼働開始で石化品の需給は世界的に余剰が続いた。26年は中国、米国、中東で大型のエチレン設備が稼働開始予定だ。大淘汰時代を勝ち抜くのは果たして誰か。
1.中国は大規模エチレン設備の立ち上げが続く
中国は化学品の増産が続き一部の製品は能力が過剰なものの、26年も新規エチレン設備が稼働開始予定だ。サウジアラムコと子会社であるサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)は早ければ26年にもそれぞれが石化コンプレックスの操業を開始する。中国資本も中国石油天然気(ペトロチャイナ)が新規のエチレン設備を立ち上げる予定だ。
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2026年に稼働を開始する主なエチレン設備
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国名
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生産者
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能力
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中国
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中沙古雷
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1,500
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中国
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華錦アラムコ石油化学
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1,650
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中国
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独山子石化
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1,200
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中国
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蘭州石化
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1,200
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韓国
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S-オイル
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1,800
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カタール
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Ras Laffan Petrochemical Project
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2,100
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米国
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Golden Triangle Polymers
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2,080
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生産能力:エチレン(千トン/年)、リム調べ
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2.日韓欧は生産再編
中国の増産は世界の石化メーカーに大きな影響を及ぼした。影響を最小化するため生産再編が進んでいる。韓国では政府が石化事業を行う10社と生産再編の協議で合意した。11月までには現代オイルバンクとロッテケミカルがデサン地区の再編について政府へ申請した。
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欧州のエチレン設備廃棄計画
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国名
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生産者
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能力
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停止時期
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イギリス
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SABIC
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865
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2022年10月
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オランダ
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SABIC
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530
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2024年4月
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フランス
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エクソンモービル
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425
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2024年末
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イタリア
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ヴェルサリス
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440
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2025年4月
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イタリア
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ヴェルサリス
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490
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2025年7月
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英国
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エクソンモービル
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830
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2026年2月
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ベルギー
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トタルエナジーズ
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550
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2027年末
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ドイツ
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ダウ・ケミカル
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510
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2027年末
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日本のエチレン設備の廃棄計画
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都市
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生産者
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能力
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停止時期
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市原
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丸善石化
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525
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2026年度
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市原
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出光興産
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370
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2027年度
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川崎
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ENEOS
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448
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2027年度
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生産能力:エチレン(千トン/年)、リム調べ
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3.オイルメジャーの世界戦略 アラムコは中国以外にも韓国で出資するS-オイルを通じて26年下期以降に大型石化コンプレックスを立ち上げる。これまでに欧州でSABICがエチレン設備を廃棄していた。欧米オイルメジャーも同様の動きを取っており、英シェルはシンガポールの石油精製・石油化学コンプレックスを売却したが、中国ではCNOOCと合弁の石化基地で増強工事中。米エクソンモービルもシンガポールに保有するエチレン設備1基を6月にも停止するが、25年に中国・広東省で全額出資による新規エチレン設備を立ち上げた。米シェブロンフィリップスケミカルは25年にシンガポールのポリエチレン設備を売却した。同社は26年に米国、カタールでそれぞれ大規模なエチレン設備を立ち上げる。
4.需給バランスは余剰続く 26年の世界の石油化学産業は日韓欧を中心に生産能力が削減されるが、対象以外の設備の稼働率が上昇するうえ、新規能力の立ち上げにより供給に大きな変化はない見込みだ。一方でオイルメジャーは生産体制の置き換えを進めており、米中、中東から需要地への販売を強化する見込みだ。 石化企業に加えて越境取引が増えることで各国の産業構造が危機にさらされることになる。すでに欧州ではINEOSが25年11月、EUに10件の反ダンピング調査を申請した。またINEOSはプレスリリースを通じて欧州の原燃料高や炭素税などの規制により競争力が減退する一方で、中国や米国から安価な製品が輸入される状況が続けば、欧州の産業は自滅し、製造業の雇用や投資、地域国家の主権が失われると警告した。26年は石化製品の需給だけではなく、最終製品の一大生産国である中国、世界で最適生産を目指すメジャーがシェアを争う一方、各国の産業政策が石化製品をどのように扱うか、その将来を占う1年になりそうだ。

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