LPG=フレート相場が上昇、活発な荷動きとバンカーコスト高が強材料に
液化石油ガス(LPG)を運搬する超大型ガス船(VLGC)の船賃がこのところ上昇している。リムが価格評価する中東/極東間のスポットフレート相場は10月1日時点でトン当たり47ドルと、前月比23.7%高、前年同月比77.4%高となった。市場関係者によると、船賃が上がった背景には、米国から極東に流れ込んでくるLPGが増え、船の需給が逼迫していることがあるという。米国から極東への航海はパナマ運河を通過した場合でも25日前後かかる。航海日数の長い航路に船が張り付くことで、スポット市場で傭船可能な空船(からぶね)が少なくなっている一方、こうした船を探しているトレーダーや輸入業者はLPGを積み込むために、高値で傭船せざるをえないのが現状だ。
昨年はハリケーン「ハービー」が8月下旬にLPGの生産・出荷施設の集中するヒューストン近郊を襲い、米国産LPGの指標価格となっているモントベルビュー市況が上昇。米ガルフからLPGを引き取るプレーヤーが、極東へ仕向けた際の採算が見合わないとして、荷積みをキャンセルした。「今年はこうしたキャンセルの動きが見られず、米ガルフから極東への荷動きが8月から10月にかけて活発になり、傭船需要の増加に繋がっている」(元売りの関係者)。
さらに、原油相場の上昇もVLGCの船賃を押し上げる一因になっている。船舶用燃料となる重油価格がこのところの原油高に引っ張られているからだ。リムの調べによると、VLGCが利用する重油の価格(シンガポール積み380cst 3.5%S)は10月1日時点でトン当たり496.5ドルと、前月比8.3%高、前年同月比34.7%高となっている。
また、この高騰を受け、大手船主はバラスト航海(貨物を積んでいない状態での航海)の際、船の運航速度を落として燃料費の圧縮に努めているようだ。ただ、運行速度が落ちると航海日数が長くなるため、これも空船の減少につながると市場関係者は指摘している。
北半球でLPGの需要期となる冬場が近づき、LPGの供給量は世界的に一段と増える見通しだ。加えて、原油価格はWTIで75ドル前後、ブレントで85ドル前後に高止まりしたまま。強材料が市場に揃うなか、VLGCの運賃は当面の間、堅調に推移するとの公算が大きい。