LPG=5月の国内出荷が減少、コロナの影響 色濃く
新型コロナの感染拡大と景気の冷え込みが、液化石油ガス(LPG)の国内出荷に暗い影を落としている。需要回復の兆しが見当たらないなか、業界内からは販売業者の存続を危惧する声も聞かれ始めた。
元売り各社の5月出荷はプロパンとブタンを合わせ、前年同月比85~95%に留まったようだ。とりわけブタン販売量は同66~69%と、一部の元売りで大きな落ち込みを記録。「経済活動の自粛で工場の稼働率が低下したり、タクシーの利用率が激減したりしたことが原因」(元売り関係者)との声が挙がっている。
先行きの見通しに関しても、悲観的な意見が多い。緊急事態制限の解除が解除されたものの、「根本的に経済がグダグダ」(元売り関係者)ななかで、LPGの出荷が短期間で劇的に上向く見込みは薄い。また、今後は観光地向けのLPG需要が減少することも懸念されている。ホテルや旅館は「三密」の状況が発生しやすい。そこに学校の夏休み短縮が重なり、子供連れの家族旅行が激減すると市場関係者は予想している。加えて、秋以降は新型コロナが再び流行することを恐れ、スキーなどのウインタースポーツを目的とした旅行の機会も減るとみられている。
さらに、「販売不振がこのまま続いた場合、1~2年の間に業界再編もありうる」との見方も市場関係者から寄せられている。まずは資金繰りに困窮したLPGの小売業者が大手の卸業者に合併・吸収されるケースが想定される。さらに、国内のLPG需要が全体的に落ちていくなかで、これまで薄利多売を是としてきた元売りの販売方針は、収益力や財務体質の安定性をより重視する方向へ転換していきそうだ。輸入基地や製油所を統廃合する流れが加速していくばかりではなく、「元売り同士の合併もないとはいえない」(元売り関係者)という。
ミツウロコやニチガスなど大手の卸・小売業者は近年、検針や配送のシステム効率化に着手してきた。コスト削減を図るためのこうした合理化の必要性は、コロナ禍でいっそう浮き彫りになっている。業界では、「交通マネーのようにLPG料金もオートチャージ化してしまえば、債権未回収の防止策になる」、「集金作業の負担を軽減するために定額のサブスクリプション方式を取り入れてはどうか」といったアイデアが取り交わされているようだ。必要は発明の母。光明を見出すための苦闘が続く。