新春特集=原油相場、2020年はどんな年だったか?
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大でこれまでの生活が一変した2020年。WTI原油市場は初めてマイナス価格を付けるなど、前代未聞な値動きに翻弄された。2020年を振り返り、2021年をどう見るか、著名アナリストに聞いた。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、2020年は原油市場を揺るがす多くの出来事が起き、想定していたリスクシナリオを上回る事態に発展したと語る。とくに①~③が印象的とした。
①新型コロナ拡大による需要の急減
②OPECプラス協議が一旦決裂、サウジがシェア拡大路線に転換
③クッシング在庫が溢れる懸念から、WTI先物価格が一時マイナス圏に転落
一方、4月にOPECプラスが未曽有の大規模減産を決定、その後減産合意が予想以上に遵守されたことはポジティブサプライズであった。野村證券の大越龍文シニアエコノミストは同じくWTI原油市場のマイナス価格が印象的だったという。マイナス価格までの急落を目の当たりにし、期近物の運用を避けるようになった投資家もおり、市場に大きなショックを与えた。NYMEXがマイナス価格を入力できるシステム改修を行っていたことが大きな要因とした。市場の在り方として、マイナス価格を入力できるようにシステム改修を行う必要性があったのか疑問だという。
エネルギー事情に詳しいアナリストは匿名を条件に語った。同氏は印象的な出来事として2020年1月初頭の米国によるイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官殺害とイランの報復示唆、そしてそれに対する米国の反撃意向表明によるイラン情勢の緊迫化を挙げた。さらに、新型コロナウイルス感染の世界的拡大による経済減速と石油需要の減退、そしてその中でのOPECプラス産油国減産協議の決裂と原油価格下落、米国仲介による日量970万バレルのOPECプラス産油国減産措置の実施合意も印象深いという。