新春特集=2021年上期の調整金はどうなる?
2021年のOSP動向はどうなるだろうか。
新型コロナウイルスの感染収束と原油需要の回復の程度によるところが大きいとの見方が市場関係者間では支配的だ。需要回復が進めば、OPECプラスの減産体制の見直しが行われる公算が大きい。OPECプラスは昨年11月末、2021年1月からの協調減産を50万バレル縮小し、日量720万バレルとすることで合意している。当初は1月から削減幅を日量580万バレルに縮小する予定だったが、新型コロナによる低迷した経済と原油需要が当初の見通しほど回復していないため、1月以降は段階的に減産幅を調整する方針を固めた。
原油需要回復にどの程度の時間を要するかは不透明だが、基本的には2021年内に回復するとの見方が市場関係者間では優勢だ。当初より小幅にとどまったものの、OPECプラスが減産の方針を示したことも原油価格の改善につながると認識されている。ドバイ原油の月間格差がバックワーデーションに転じたため、サウジアラムコをはじめ中東の主要産油国は1月積みのOSPを引き上げた。
ただし、需給面では不確実要素が点在する。まず新型コロナ感染拡大による経済活動の停滞が挙げられる。欧米を中心に依然として感染者数が増加しており、日本や韓国、マレーシア、インドネシアなど東南アジアでも感染の収束には至っていない。英国などで緊急使用が承認されたワクチンも普及するまでの期間が不透明な上、変異種のコロナも出現したため、経済活動の回復、そして本格的に原油需要の回復は早くて2021年下期との見方も伝えられている。
供給面では、WTI価格が50ドル台を回復すると米シェール企業が原油生産を本格的に再開するとみられており、原油価格の回復は一方で供給過多、ひいては需給悪化懸念になり得ると指摘する声もある。
また、OPECプラス内にも減産体制を巡る対立意見が存在する。上述1月の減産幅縮小の決定もサウジアラビアが減産幅の維持を提案した一方で、ロシアを筆頭に複数産油国が減産中止を主張するなど、足並みの乱れが露呈しており、今後合意が決裂すれば昨年3月のように協調減産が終了し、供給増に陥る懸念もある。こうした不安材料が表面化すればALのOSP引き下げに繋がりかねない。
原油市場を巡る他の要素としては、アブダビ産原油の動向がカギになるとの見方が市場関係者から寄せられた。インターコンチネンタル取引所(ICE)が今年3月29日にICE アブダビ先物取引所(IFAD)を立ち上げる。IFADではアブダビ産マーバンが先物として上場され、アブダビ国営石油会社(ADNOC)はマーバン先物をベースとした同国産原油の新たなOSPを設定するとみられている。すでにアジア向けとしてマーバン原油を指標に採用する動きも見られ、中東産原油やアジア向け原油相場にマーバン先物が与える影響が大きくなれば、サウジアラビアとの勢力図にも影響を及ぼし、OSPを巡る環境に変化が生じるのは必至だ。