新春特集=製油所動向、アジアの注目点
中国を見てみると、2020年の中国の製油所設備能力は、前年比で日量26万バレル(年産1,300万トン)増、21年は日量44万バレル(年産2,200万トン)増となる見通し。2021年の石油製品需要の回復は、新型コロナや洪水、台風の影響が残り19年と同水準程度の見込み。このところの製油所稼働率は、中国国営ペトロチャイナは20年9月が72%、10月が76%程度だ。同社の予測では、中国全体の製油所の精製能力は2025年までに1億3,500万トン増え、10億トンに到達するという。このうち50%は独立系製油所で、国内競争が一段と激化しそうだ。
中国政府は、2020年から独立系製油所に対する輸出割当を再開しており、21年は国営石油会社のみならず、独立系製油所からの石油製品輸出も増加する見通し。製油所の設備能力が増加の一途を辿る一方、21年も経済成長の鈍化や環境対応などで石油製品の需要が伸び悩むとの見方がある。製油所の生産調整が継続されるとの指摘が聞かれる。
韓国石油4社の原油処理能力合計は日量327万バレル。これに対し、国内の石油消費量は279万3,000バレル。もともと韓国は石油輸出国のため、2021年にアジアの石油需要が回復しなければ、各社とも引き続き減産調整を強いられることになりそうだ。
韓国石油会社の関係者によると、SKエナジーは製油所の平均稼働率を60~70%程度の低水準に維持するとの観測が寄せられている。ただ、比較的精製マージンが堅調なVLSFOなどについては、20年に新規稼働した残渣油脱硫(VRDS)装置の採算確保のためにも増産を続けるとみられる。
一方、2021年の経済動向が2020年より回復するとの見方が台頭していることから、GSカルテックスや現代オイルバンクは製油所稼働をやや引き上げるとみられている。S-オイルは株主であるサウジアラムコから定期供給される原油処理のために、製油所の高稼働は2021年も継続するとみられている。ただ、2021年は中国の各石油会社から輸出が増加するとみられ、競争が激化するとの観測も浮上。韓国石油各社が20年と同様に減産を余儀なくされる公算が大きいとの指摘もある。
台湾では、新型コロナウイルスの防疫対策は他国と比べて進んでおり、感染拡大は抑えられている。しかし、「台湾の市場規模が大きくないため、製油所の稼働は結局のところ国際市況の影響を受ける」(台湾石油会社)と伝えている。2021年も軟調に推移するとみられる世界の石油製品市況を背景として、台湾の製油所の稼働率は60%台で推移する局面がありそうだ。