新春特集=製油所動向、オセアニア・東南アジア地区
豪州では、BPが2020年10月末時点で6カ月以内に豪州西部のクイナナ製油所(日量14万6,000バレル)を閉鎖し、輸入ターミナルに移行予定と発表している。このほか、Viva Energyとアンポールの2社も、それぞれジーロングおよびリットンの製油所を閉鎖し、輸入ターミナルに移行することを検討している。豪州の製油所は老朽化が進んでいるうえ、精製能力も小規模であるため、感染拡大による精製マージンの悪化を受け、アジアの大型製油所に太刀打ちできなくなっている。豪州政府は国家エネルギー保障と再雇用に関する援助を強化するため、石油会社が製油所を維持するための支援金提供を決定したものの、製油所閉鎖の流れは止まりそうにない。BPは65年操業の末にクイナナ製油所を閉鎖することになるが、国内に供給を続けることを約束しているという。
コロナ禍による需要縮小もあり、東アジアでは供給過多が問題となっており、石油会社は石油製品の輸出を強めている。その主要な持ち込み先の一つが豪州となっており、同国内の製油所がいずれも閉鎖となる可能性もある。いずれにしても、豪州は石油の輸入ポジションを強めている。アジアでは2021年は中国からの石油供給の増加が見込まれており、豪州の需要増加分は中国からの供給増加で相殺されるとの指摘もある。豪州にとって中国は最大の輸入相手国である一方、中国にとっても液化天然ガス(LNG)の輸入の半分を豪州産が占めている。
ニュージーランドはどうだろうか。石油エネルギー技術センター(JPEC)によると、ニュージーランドでは同国唯一の大規模バイオリファイナリーの閉鎖が検討されている。Z エナジーは2020年次レポートで、「オークランド近郊Wiriのバイオディーゼルプラントは、バイオ燃料を供給し二酸化炭素の排出量削減をする重要な役割を需要家から評価されてきたが、補助金など助成策なしでは採算性が取れず、生産継続で赤字を続けることはできない」と述べている。
同社は、新型コロナ感染拡大による事業環境の悪化を受け、Wiriのバイオ燃料生産プラントを少なくとも1年間停止(休止)することを決め、経済や規制環境が改善した場合はバイオディーゼルの生産を再開するという。
Zエナジーは、自社のトラック給油所、顧客のトラック基地、バルクタンクで高品質バイオディーゼルを供給している。年次報告書によるとバイオディーゼルの生産量は年間1,900万klで、B5ディーゼル(バイオ燃料配合率5%)として販売されている。環境対応は進んでいるものの、バイオリファイナリーの採算性が厳しいことも示している。
市場関係者によると、シンガポールでシェルは遅くとも2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、ブコム製油所(日量50万バレル)の精製能力を半減にする計画という。これに伴い従業員の削減も進めるようだ。 一方、エクソンモービルは、シンガポールの石油精製・石油化学コンプレックスの拡大を計画通り進めるという。同社は2019年、低硫黄クリーン燃料の増産に寄与するシンガポールのコンプレックス拡大計画に数十億ドルを投じることを決定した。拡張プロジェクトは2023年に軌道に乗り、重油およびその他の残渣油製品を高付加価値な潤滑油などに転換することが可能になると期待されている。拡張される能力は、日量4万8,000バレル程度の高品質船舶燃料を含む低硫黄成分のクリーン燃料を精製する装置となる計画。エクソンのシンガポールの製油所は、同社最大の日量59万2,000バレルの原油処理能力を有する。
マレーシア国営ペトロナスは、国営サウジアラムコとの合弁会社であるペンゲラン製油所(日量30万バレル)の稼働を、2021年1~3月期に供給能力を増強したうえで再開する計画。同製油所は当初、19年に稼働開始する予定だったが、2020年3月の火災によって停止している。同計画は残渣油脱硫装置の2021年1~3月期の稼働開始などを含んでおり、水素化脱硫装置の修理は20221年10~12月まで継続する見通し。
サウジアラムコは原油供給の50%を担うが、その比率を70%まで引き上げるオプションを持つ。同製油所の稼働は、ただでさえ供給過剰となっている東アジア石油各社にとって脅威となる。需要不振に伴う精製マージンの悪化や、中国の製油所増設は、豪州はじめ、ニュージーランド、フィリピンなどで計日量50万バレルの供給能力を削減する要因になったとされる。ペトロナスが保有する製油所の2020年の最初の9カ月間の平均稼働率が82.6%と、前年の91.5%から減少。一方、石化設備の稼働は94.5%と前年の92.8%から上昇した。
フィリピンについて、市場関係者によると、同国最大の石油精製会社ペトロンは、石油製品の市況悪化を受けてバターン製油所(日量18万バレル)の閉鎖を検討している。ただ、状況が改善すれば稼働を再開することも示唆しているという。同製油所は2020年5月に定修入りし、9月に稼働再開したものの、その後10月に閉鎖計画を発表していた。同社は、変動の激しい市況の中で課税問題にも苦しんでおり、政府との交渉を進めている。政府側は同社の事業存続を望んでいるものの、運営は予断を許さない状況が続いているようだ。
ベトナムグループ(PVN)のビンソン石油精製会社はズンクワット製油所の原油処理能力を従来の30%増の日量17万バレルまで拡大する計画という。