新春特集=バンカー相場、2021年のトレンドを占う
2020年新型コロナの感染拡大後、世界を航行する船舶、海上物流が約20%減少した。ただし、陸運や空運業界と比べ、海上物流の落ち込みは限定的だ。すでに減速運航(スロースティーミング)で航行し、船自体の開発で燃費が良くなっているため、バンカー需要そのものは減少トレンドにある。各国の石油会社はジェット燃料のマージン悪化を防ぐため原油処理量の減産を進めている。 シェルはシンガポールブコム 製油所の労働者削減と装置の稼働率を落とすことを決めている。
また、2020年1月から開始されたIMO環境規制を前に、アジアの各石油会社は製油所に脱硫装置を新設、ないしは能力を増強し、残渣油由来の燃料油が精製されにくい状態となった。この結果、HSFOの供給減少、LSMGO供給は微増となる中、VLSFOで利益を得るため精製量が調整され、2021年は需給がやや引き締まるとの見通しも伝えられている。
輸入玉を販売する港では、輸送コストの上昇や精製コスト高で受渡し価格に転嫁できない限りバンカー油の販売ができず、バンカー港としての存続も危ぶまれている。202 0年以降、新規スクラバー搭載船が加し、HSFO(硫黄分3.5%重油)の需要は堅調だ。ただし、新規スクラバー搭載船は2020年下期~2021年上期でピークアウトするため、さらなる需要増加は見込めない。0.5%S重油(VLSFO)需要は横ばいで推移しそうだ。価格は原油先物並みに推移する。LSMGO(軽油由来)需要も横ばいの見込み。しかし、販売価格の低迷でマージン悪化の可能性が高い 。
世界の船舶数は、2019年比10%減と船会社の多くが算出している。一方、LNG燃料船は2025年までに15%増加する見通しだ。このため2021年はLNGバンカーの規模拡大の年と言っても過言ではないだろう。 世界的に脱炭素が広がる中、新規燃料の開発が世界で活発化するだろう。
地区別の動き はどうだろうか。欧州は舶用燃料の環境規制を牽引すべく、インフラ、マーケット、取引におけるLNG燃料、水素燃料、電力燃料の開発をさらに進める年になる。
アジア地区では、中国政府の香港圧政を受け、香港はバンカースポット港としての役割を失う可能性が市場関係者間で伝えられている。中国舟山港がアジアでシンガポールに次ぐ需要と供給を誇る港として確立される可能性が高い。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国が協調減産幅を拡大すれば、原油輸出機会が減少しフジャイラ港の存続意義が少なくなる。OPEC盟主のサウジアラビアは減産の意向だが、ロシアをはじめとする非加盟国は増産の立場を露わにしており、原油輸出のアンバランスがフジャイラ港の必要性を危うくする。
原油価格が先物化し、実需要に対比せず高値で推移するとの見方から、各バンカー価格は高値で推移しそうだ。最安値はARAだが、HSFOの供給逼迫感が台頭すれば、価格は全体的に切り上がる可能性が高まる。また、世界のジェット燃料需要が回復し 、国際線の往来が増加すればLSMGOも連動して上昇する可能性が高い。さらに、VLSFOはLMSGOの利益を補填するために、あえて需給バランスを引き締め、やや高値で推移しそうだ。
一方、新型コロナ感染がさらに拡がり、経済活動が一段と低下した際には原油価格は下落し、バンカー油価格も軟化は避けられない。パナマは米とアジア間を移動する船舶の需要に応えるため、引き続き需要は堅調とみる市場関係者が多い、極東ロシアやフジャイラは原油処理量を増やし、国策としてバンカー港を盛り上げる意向がない限り、世界におけるバンカー港としての役割は難しい。
日本、韓国は既存の国内船舶需要と天候に左右されながらも、どのようにしてボンドバンカー需要を呼び込むかが2021年 も課題となる。国策として水素やLNG燃料船の港湾インフラが今後どう開発されるか、港の魅力度と利用価値が求められる。
市場関係者から伝えられた2021年上期の相場予想は以下の通り。