尿素クライシス(下)=アドブルー店頭在庫切れ、「出荷量170%」
車両用尿素水アドブルーの品薄は、フリートサービスステーション(FSS)にも広がっている。FSSは、運送会社が拠りどころとする物流の最後の砦だ。各サプライヤーともFSSへは優先的に供給しているが、それも追い付かなくなりつつあるようだ。
「店舗によっては出荷量が前年比170%」。全国に多数のFSSを運営するフリート業者は不安気にこう語った。向こう数年間は需要が年10%程度増加するとされるアドブルーとしても異常な出荷量だという。
中型バルクコンテナ(IBC)へのアドブルーの納入が滞った運送会社がやむなくFSS店頭で購入していることが背景にあるようだ。また、IBCへの供給を受けられている運送会社も、いつ供給が止まるとも知れない状況下で、自社の在庫を温存するため、FSSで購入する機会が増えているとの指摘もある。
店頭での出荷が増えるのは、フリート業者にとっては本来喜ばしいことだが、足元の状況下ではむしろ不安材料だ。サプライヤーがFSSへのアドブルー納入量に制限を設けており、仕入れが追い付かないためだ。
全国にFSSを展開する中堅フリート業者の関東エリアの直営店舗では、バックインボックス(BIB)はおろか、計量器付き給水機(ディスペンサー)での給水もできなくなる店舗が出ている。在庫があっても販売数量を制限している店舗も多い。
また、西日本エリアを中心にFSSを複数運営する業者は、アドブルーの給水を「トラック」に限定したうえ、1車両あたり15リットルまでに数量を制限しているようだ。同社の担当者は「品薄の終わりがみえないので、やむを得ない対応」とする。
別のフリート業者もエリアごとになんらかの出荷制限を設け、店頭での出荷量の調整に追われる。FSSでの一時的な販売休止、販売数量制限は年末にかけていっそう広がるとみられる。店頭での購入もままならなくなれば、運送会社は抱え込んだ在庫を消費せざるを得なくなる。日本全国に積まれたアドブルー在庫の取崩しが始まっている。
※『CROSSVIEW軽油』第90号(21年12月6日発行)でアドブルー関連記事「~三井化学が尿素増産も中国輸入減補えず、経産省「状況注視」~」を掲載しています。