新春特集=水素・アンモニア、2022年は「実証」の年に
2021年は、前年12月に政府が打ち出した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を受け、水素やアンモニアを燃料として利活用するための国際会議の開催など、官民で動きがみられた。基本的に日本国内での製造はコスト高となることから、供給の主流は海外からの輸入が想定されている。このため、商社や電力会社、海運会社やメーカーが、豪州をはじめとする複数の現地企業と、生産、管理、輸送などの実証に関する覚書を締結。2022年はこれら「実証」の年になる。
アンモニアの2021年を振り返る
現状取引されているアンモニアは肥料や化学向けだが、欧州では新型コロナからの経済回復に伴い天然ガス価格が急騰。これを受け、アンモニア価格も高騰し、2021年初頭に200ドル程度だったCFRタンパ価格は、年末に990ドルまで跳ね上がった。日本向けの輸入価格も年初から上昇を続け、8月には7万4,885円と、年初の3万1,000円台から倍以上となった。その後も国際的な品不足を受け、7万円台を維持している(グラフ参照)。
一方、国内では、昨年10月6日に「第1回燃料アンモニア国際会議」が開催された。燃料としてのアンモニアを扱う国際的会議は今回が初となる。会議では、バリューチェーン構築に向けた官民による戦略的取組を検討、推進状況が出席者から示され、新たに生産国と消費国、さらに技術移転を通じた国家間の国際連携が重要との認識が示された。
水素の2021年を振り返る
水素も、昨年10月4日に「水素閣僚会議」が開催されたが、これは2018年に初めて日本で開催され、今回で4回目。水素社会構築に向けた情報や取組の共有の場となっている。欧州が脱炭素の中核として水素を掲げる中、グリーン水素作成に必要な再生エネルギーのコストなど、日本が抱える課題の解決が急がれる。
2022年は「試験・実証」の年
一部では、既に足元で走り始めている案件もある。JERAはIHIと共同で2021年6月から25年3月まで、碧南火力発電所4号機でアンモニアの20%混焼を目指した実験を開始した。21年10月からは同5号機でバーナ48本中2本を改造し、22年3月まで材質の違いによる影響や実証に必要な条件を調査している。
また、水素は、HySTAR(技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構)が、豪州の褐炭を有効利用した水素製造、輸送、貯蔵、利用のCO2フリー水素サプライチェーン構築に向け、動き出している。21年12月には、日本海事協会から水素運搬船「すいそふろんてぃあ」の船級を取得。予定では、今年3月までに日豪間の運航を目指している。
モビリティ分野では、トヨタ自動車と日野自動車がMIRAIの80倍の水素を使う大型燃料電池トラックの開発を進めており、今年春頃から羽田クロノゲートと群馬間で宅配荷物等の輸送実証を行う。鉄道では、JR東日本が同じく今年3月頃に燃料電池鉄道車両の実証試験を鶴見線や南武線で予定している。