2022年の東南アジア積み日本向け木質ペレットに対し、相場はトンあたり130~140ドルで現状維持と見る市場関係者が思いのほか多い。
一方、ベトナムでは新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、スポット販売余力は十分ではないとの声も寄せられ、現行を上回る水準で推移するとみる市場関係者もいた。
インドネシア積みPKSは同100~110ドル、マレーシア積みPKSは同90ドル台とやや底上げを見越す声が寄せられた。
新規バイオマス発電所の動向はどうなる?
今後の相場に影響を与えると予想される注目点として、多くの市場関係者は前年に続き木質ペレット、PKSともに新規バイオマス発電所の稼働による需要増を挙げている。
表1に2022年稼働開始予定の大型バイオマス発電所を示した。バイオマス専焼の大型発電所の立ち上げに加え、大手電力会社保有の石炭火力発電所がバイオマス燃料の混焼を開始、もしくは専焼へと切り替える動きもある。
表1: 2022年立ち上げ予定の主な大型バイオマス発電所
発電所名
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発電出力
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使用燃料
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運転開始時期(*)
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(kW)
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国内未利用材
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国内一般材
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木質ペレット
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PKS
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下関バイオマス発電所
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74,980
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〇
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2022年1月
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かんだ発電所
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74,950
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〇
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〇
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2022年2月
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米子バイオマス発電所
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54,500
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〇
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〇
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2022年3月
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武豊火力発電所5号機
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1,070,000
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○
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2022年3月
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福島いわきバイオマス発電所
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112,000
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○
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2022年4月
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鈴川エネルギーセンター火力発電所
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85,400
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○
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2022年4月
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竹原火力発電所新1号機
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600,000
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○
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2022年5月
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袖ケ浦バイオマス発電所
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75,000
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〇
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2022年7月
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富岡エコエネルギー発電所
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74,950
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〇
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〇
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〇
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2022年9月
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石狩バイオエナジー発電所
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51,500
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〇
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〇
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2022年10月
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三隅発電所2号機
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1,000,000
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〇
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○
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2022年11月
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境港バイオマス発電所
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24,300
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〇
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2022年度内
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出所:資源エネルギー庁 事業計画認定情報と各社公表情報よりリム情報開発が作成
*既存の発電所のバイオマス燃料使用開始時期も含む
バイオマス発電所の稼働数増に伴い、木質ペレットやPKSはともに輸入量も増加傾向にある。2021年1~10月の輸入量は木質ペレットが約245万トンに達し、前年比49.9%増。PKSは200万トンを突破し、同11.7%増となった(表2)。上述した2022年稼働予定の大型発電所向けバイオマス燃料使用量の試算は、年間約330万トン。使用開始時期はまちまちだが、今後これに相当する需要が上積みされることになる。
表2: 日本のバイオマス燃料輸入量
輸入量
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木質ペレット
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PKS
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(トン)
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2021年
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2020年
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前年同月比
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2021年
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2020年
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前年同月比
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1-10月
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2,452,332
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1,636,305
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149.9%
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2,028,815
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1,816,661
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111.7%
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出所: 財務省貿易統計
気になるフレート相場の動向
2020年までの日本着相場は、木質ペレット、PKSそのものの需給動向に拠るところが大きかった。しかし、2021年の市況では、スポットフレートコストが年初から2倍以上の水準に切り上がり(グラフ3参照)、日本着相場を押し上げる一番の要因になったとの指摘が聞かれた。
グラフ3: 2021年東南アジア積み日本間 スポットフレート価格動向

出所: リム情報開発によるアセスメント
2022年もスポットフレートコストは東南アジア積み日本間で50ドル以上と、高止まりを予想する市場関係者が多いようだ。バイオマス燃料の輸送需要は右肩上がりで伸びている一方、東南アジア積み運搬の主力である近海船の供給は現在も不十分だと指摘されている。さらに2022年予定の新造船の供給も少なく、需給逼迫が続くと見込まれているようだ。
一方、2022年におけるCOA(数量輸送契約)水準も、スポット市況並みか、やや上乗せとの見方が寄せられており、複数年の傭船契約を締結していない限りは発電所渡し価格の大部分をフレートコストが占めるという状況が続きそうだ。
第三者認証制度に注目
2022年後期の相場動向に影響を与える注目点として、多くの市場関係者は「第三者認証制度を取得したPKSの登場」を挙げた。固定価格買取制度(FIT)の下で運転するバイオマス発電所は、使用燃料に対する持続可能性(合法性)を証明することが求められている。なかでもPKSは、持続可能性が担保されていることを第三者認証の取得で証明する必要があり、2022年度までにFIT認定を取得済み案件に関しては、2023年3月31日が第三者認証の取得期限となっている(2021年12月15日時点)。 現在、FIT制度上で認められている第三者認証はRSB(Roundtable on Sustainable Biomaterials)とGGL(Green Gold Label)の2種類のみで、これら以外の第三者認証が追加されるかどうか資源エネルギー庁バイオマス持続可能性ワーキンググループで議論が続けられている。
このなか、早ければ2022年中ごろには第三者認証の取得をしたPKSの売買が表面化するようになり、認証取得済みPKSにはプレミアムが付き、未取得のPKSとの価格差が生じるとの予想もある。 さらに、2022年10月ごろには翌年のターム供給契約が開始され、認証取得済みPKSに需要が集中する公算が大きい。この流れに伴い、スポット相場も底上げされる可能性があるとの見方が寄せられた。認証を取得したサプライヤー数と輸出能力がバイオマス燃料の相場を大きく左右するとみられ、第三者認証を巡る議論の行方と各プレーヤーの取得状況が重要視されている。
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