新春特集=プロピレンは低採算も下値は底堅い、PP市況がカギ
アジアのプロピレン相場は一時強含む場面もみられたが、北東アジア着でおおよそ1,000ドル台前半、中国国内で7,600~7,800元を中心に小幅なレンジで推移した。中国や韓国で新規設備の稼働開始が相次ぎ供給の潤沢感が増し、プロピレンの採算性は低下した。中国ではプロパン脱水素(PDH)装置が新たに稼働を開始、プロピレンの自給率が上昇し輸入に対する依存度は低下した(表4)。アジアの輸出国が中国向けに輸出していたカーゴは、欧州や中東、北中米向けに輸出された。また、原料であるメタノール、石炭、プロパンが高値圏で推移したことから、MTO/CTO、PDH装置の稼働率が低下、相場を下支えた。
2022年も生産能力の急拡大は続く
中国では2022年にプロパン脱水素(PDH)装置のほか、MTO、さらには大規模な石油精製基地の稼働開始が相次ぐ(表5)。これにより、プロピレンの生産能力が大幅に増加する見通しだ。2021年までに中国の需給バランスは不足から均衡した状態になったとの見方もある。今後も新増設が続き、2023年には輸出バランスに転じるといった見方もある。ただし、MTOやCTO、PDHなどは2021年後半に低採算に苦しむ場面も続き、減産すると同時に、市場からプロピレンを購入する動きもみられた。中国が余剰バランスに転じて以降は、各設備は採算に応じて需給の調整弁になる可能性が高い。このなか、プロピレン相場は2021年同様に、MTO/CTO、PDH装置の採算分岐点を底値としながらも、上値の重い展開が続きそうだ。
中国のPP輸出量は増加か? 東南アジアでの販売合戦が激化
加えて、新規のプロピレン生産設備には誘導品設備も供えられ、プロピレンの外販量が増加することはない。しかし、誘導品のうちポリプロピレン(PP)などは、2021年前半に中国から東南アジア市場に活発な売込みもみられた。韓国で生産されたPPはコロナ禍前には欧州向けの輸出が活発に行われていたが、コンテナ不足、フレート高騰により難しくなった。年明けにはマレーシアのPengerang Refining and Petrochemical (PRefChem)が火災による長期停止後を経て、稼働を再開するとみられる。すでに東南アジア市場はこれら輸出国の間で熾烈な競争が起きているが、2022年にはさらに激化する見通しだ。
中国ではプロピレンを外部購入するPP設備の立ち上げも計画されている。このうち、大手の中国軟包装がPP増設を年後半に計画している。同社は同一資本系列でPDHを操業しているが、PP稼働開始後にはプロピレンを外部購入する見通し。
ただ、中国からのPP輸出が順調さを欠けば、競争力に劣るPPメーカーは減産を余儀なくされる可能性が高そうだ。