新春特集=国内ガソリン小売価格、7年ぶりの高値に
2021年の国内石油業界は、前年に続いて新型コロナウイルスに翻弄された1年となった。年初や夏場にかけて特に感染が拡大し、緊急事態宣言から人々の移動が制限された。経済活性化の起爆剤にと期待された東京オリンピック・パラリンピックの効果も限られたとみる関係者が多かった。今回は、そんな1年をガソリン小売価格動向や消費の最前線であるガソリンスタンド(サービスステーション=SS)の取組に焦点を当て、振り返ってみたい。
ガソリン小売価格の動向
2021年の店頭小売価格は、資源エネルギー庁まとめの給油所小売価格調査によると、12月20日時点で全国平均165.1円だった。前年同期の12月21日平均135.4円と比べ、29.7円の値上がりだ。
2021年を迎え、小売価格は概ね上昇傾向にあった。特に9月6日以降は原油価格の上昇を背景に、10月4日時点で160円を突破。11月8日にはこの年の最高値となる169円をマークした。以後は、原油価格の下落に伴う卸価格の引き下げで徐々に小売価格は切り下がっているが、それでも依然として高値圏にあることに変わりはない。
出所:資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」
2005年からの小売市況の推移は図2のとおり。やはり今年の小売市況は過去16年間でも高水準に位置していることが分かる。仮に170円を超えた場合、リーマンショック前後の高値となる。
出所:資源エネルギー庁「給油所小売価格調査」
政府は昨年11月16日、ワクチン接種率が高まり、新型コロナの感染が落ち着く最中、上昇するガソリン小売価格を憂慮し、価格高騰の抑制針を打ち出した。全国小売価格が170円を超えた場合、石油元売りや輸入商社に対してリットルあたり最大5円の補助金を支給するというものだ。12月13日から3月31日までの時限立法とし、即効性を優先した。経済の回復基調が鮮明となるなか、燃料価格の高騰による景気の腰砕けだけは絶対に避けなければいけないとする意図が強く反映された。
この政策が報じられたのち、いち早く反応したのは出光興産だった。同社は11月17日に「政府補助制度の詳細が決定し運用が開始される場合には、補助金相当分を特約販売店等への卸価格に全額反映させる」と発表。
次いでENEOSが24日、コスモ石油マーケティングが25日に同様の内容を発表した。12月にキグナス石油や太陽石油も政府補助金が支給された際には仕切り価格に反映させると発表している。
一方、実際の現場では混乱し、各社ともに具体的な方策等は11月末時点で定まっていないようだった。商社や卸業者、さらに小売業者などから反対や不安、戸惑いといった声も聞かれ、今のところ歓迎する声は少数だ。補助金制度は2021年内に発動はなかったため、実際のどのような運用、さらに補助金が支給された際の価格形成がどうなるのか、各社ともに探りの段階にある。そのため、補助金ではなく暫定税率の廃止を求める意見も根強い。期限となる3月末以降に原油が高騰した場合の対応など、まだまだ詰める部分が多いともいえる。「各種の声は重々聞こえている」(資源エネ庁石油流通課)とし、ある程度の批判は覚悟のうえで、スピード感ある価格対応策を検討した結果だったと担当者は語った。