内燃研適合油=4~6月補助金「半額」還付に舵、一部に疑問の声も
低硫黄船舶用C重油(適合油)の内燃研リンクでの販売に関し、一部の元売り、燃料商社が、4~6月分は燃料油補助金を「半額」のみ還付する方針に舵を切り始めた。
複数の市場関係者によると、コスモ石油マーケティングがこのほど4~6月の内燃研リンクの販売について補助金還付を半額にとどめる方針を通知した。燃料商社のなかにも同様の方針を需要家に対して提示する向きが増えているという。
適合油内燃研価格は「産燃向けC重油価格(メニュー)」と「東京商品取引所(TOCOM)海上バージ軽油先物価格」を50%ずつ取り入れて決定する。
経済産業省によると、石油製品先物取引などの国内市況のみを参照して価格を設定している場合、補助金相当額が織り込まれているとみなす。また、織り込まれている指標と、そうでない指標を組み合わせている場合、両者の比率を按分するなどの合理的な方法によって補助金支給額を算出する必要がある。
適合油内燃研価格に50%含まれる「TOCOM軽油先物」にはすでに補助金を含むとみなすため、元売りや燃料商社が内燃研リンクでの適合油販売について残りの50%のみ補助金を還付するのは、経産省の補助金運用方針に沿った対応だ。
一方、燃料商社のなかには、半額還付について潔しとしない向きもある。TOCOM軽油先物価格に十分に補助金が織り込まれていないとみているためだ。
21年のTOCOM軽油先物価格は、原油先物価格対比で年平均19,000円程度の順ざやだった。これに対し、6月14日時点では2,500円程度の逆ざやとなっている。同日を含む週の補助金支給単価38,800円が一定程度織り込まれたとみられるが、見方によっては17,000円程度が織り込まれなかったとみることもできる。
燃料商社が、補助金全額の支給を受けられる元売り基準価格などで仕入れ、内燃研リンクで需要家に販売する場合、補助金半額の還付で済むとすれば、TOCOM軽油先物価格のなかに織り込まれていないとみられる補助金相当額については燃料商社の利益として残ったと映る。税金が原資となっているだけに、そのことに後ろめたさを覚える燃料商社も少なくない。
マーケットでの取引価格に補助金がどの程度含まれるかは不透明で、「経産省の方針に沿った補助金の還付対応をせざるを得ない」(大手卸業者)との指摘がある一方、ここ数年取引実績がないTOCOM軽油先物価格のなかに、補助金が全額織り込まれていると「みなす」ことに、燃料商社からも疑問の声が上がっている。
4~6月の補助金単価は平均で32,000円を超えるとみられ、取扱数量によっては補助金だけで億単位に上る。このため政府のガイドラインに機械的に沿うのではなく、きめ細かい調整を試みようとする動きもみられる。