尿素輸出入動向=5月輸入価格下落も依然高水準、国産安で輸出加速
財務省が6月29日に公表した通関貿易統計によると、肥料や尿素水アドブルーなどの原料になる尿素の22年5月輸入加重平均単価はトンあたり112,760円と、前月から4,688円(4.0%)下落した。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響で輸入価格が過去最高値まで急騰した前月から一服感が出た。国際市況の下落を受け、マレーシア産価格が大幅に下がった影響が大きかった。同国産の輸入量が多いことから加重平均価格が押し下げられた形だ。
輸入価格は依然高水準、輸入量は正常化
ただし、前年同月対比では69,526円(160.8%)高と、依然として高値圏で推移している。中国やサウジアラビア、ベトナムなど主要輸入国からの輸入価格が大幅に上昇した。ウクライナ危機に伴う供給不安を映した格好だ。ドル高円安が進行したことも輸入価格を支えている。
また、ロシア産の尿素が520トン輸入された。ロシアは昨年末の供給危機をきっかけに、新たな輸入先としての検討が進んできたが、ウクライナ侵攻の制裁で同国の銀行決済ができなくなるなど商談が滞っていた。欧州に拠点を構えるロシア関連会社などを通じて輸入されたとみられる。ただし、輸入単価はトンあたり153,267円と、平均を大きく上回っており、継続的な輸入が行われるかは不透明だ。
22年5月の輸入量は2万8,491トンと、前月から1,917トン(6.3%)減少した。ただ、前年同月を2,473トン(9.5%)上回るなどおおむね平年並みの輸入量が維持された格好だ。中国からも6,966トン輸入され、前月から1,272トン、前年同月から736トンそれぞれ増えた。
中国の輸出規制強化懸念、日本の輸出後押し
ただし、中国は足元で輸出規制の強化に動いているとの情報も出ている。リム情報開発が発行する週刊『クリーンエネルギー』(22年7月5日号)は、「中国当局が、直近の輸出実績が多い工場について、23年4~6月期まで法定検査を申請しないように指示した」との市場関係者の声を報じた。
中国の輸出規制の影響で昨年に国内の尿素水不足が深刻化した韓国は、すでに尿素確保に動き出しているとの見方もある。財務省貿易統計をみると、22年5月に大阪府堺泉北からも韓国向けに960トンが輸出された。前月の100トンから大幅に増えた。
海外市況の急騰やドル高円安の影響で、日本産尿素が相対的に割安に映っている。三井化学は誘導品の生産を減らすことで尿素増産体制を維持しているほか、日産化学は6月にメラミンの生産を止め、メラミン原料の尿素に余剰が生まれている。世界的な肥料価格の高騰のなかで、日本産尿素の輸出が今後、増える可能性もありそうだ。
※『CROSSVIEW軽油』第102号(22年6月21日発行)でアドブルー関連記事「東京都、川崎市交通局アドブルー入札結果は下落、輸入尿素に競争力」を掲載しています。