どうなる今冬のエネルギー供給2023(下)-バイオマス、アンモニア
【バイオマス】 バイオマス燃料の木質ペレット、パーム椰子殻(PKS)とも冬場にかけタイト感が強まりそうだ。 木質ペレットは、電力需要が増加する冬場に欧州の買い気が高まると予想される。ロシア産ペレットの供給が困難となっているなか、北米産ペレットが欧州に流れる一方、北米の供給業者が極東向けのターム供給分の代替調達として東南アジア産カーゴを買い進める可能性がある。主要生産国のベトナムではペレット生産工場の稼働率が下がっていると伝えられており、需給が引き締まるとみられている。 PKSは、パームヤシの収穫期を迎え、搾油工場(ミル)の在庫が積み上がっている。このため、足元の供給は潤沢だ。ただ、固定価格買取(FIT)制度のもと運用するバイオマス発電所では、今年度末までにPKSの持続可能性を担保する第三者認証を取得する必要がある(2023年8月時点)。現時点ではパーム生産国のインドネシア、マレーシア積みとも認証の取得が遅れており、認証品の供給は限られるという。発電事業者が認証取得済みPKSを本格的に買い始める今冬には、深刻な供給不足に陥る可能性が指摘されている。「燃料不足で複数のバイオマス発電所の稼働が止まる恐れがある」(市場関係者)との声も挙がっている。
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻後、原料となる天然ガス価格が上昇したことで、アンモニアも価格騰勢が続いた。同年9月には日本の輸入価格がトンあたり38万円台を付けるなど、過去最高値を更新。その後は欧州の暖冬もあり、ガス価格に連動する形でアンモニアも下落を続け、23年6月は4万6,205円と侵攻前を下回る水準まで値下がりした。ただ、今夏には底打ちしたとの見方が市場で広がっている。
足元ではアンモニアの生産コストが逆ざやになっているため、生産よりもスポット調達を優先する生産者が増えている。また、派生品の尿素が先行して値上がりしているが、これから冬を迎える北半球ではガス価格がコンタンゴ(順ざや)を形成しており、アンモニアも連動高になると予想されている。さらに侵攻以降、黒海出しのアンモニア供給停止が続き、ロシアが7月に黒海封鎖を表明したことで、供給停止が長引くとの見方が強まっている。一方、欧州では冬場に向けて天然ガスの貯蔵がほぼ満杯になっていると報じられるなど逼迫感が後退。侵攻直後のような高値にはならないとの観測もある。
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