新春特集=2025年の電力市場、燃料市場や原発動向に注視
2025年の電力市場は、燃料市場や原子力発電の動向に需給が左右される展開が続く見通し。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の試算では、火力発電などの補修が集中する10月や11月に、東京エリアの供給信頼度が低くなる見通しが示されており、電源トラブルや気温の変化による需要増加が生じた場合、需給が引き締まる可能性が示されている。こうした見通しのもと、安定的な燃料調達や原子力発電の稼働による安定した供給体制の構築が求められる。さらに、電力価格は需給動向で大きく変動するため、電力先物を活用したヘッジの動きも一段と進む可能性がある。 再エネ比率の高まりで日本の電源構成にも変化が生じるなか、調整力としてのLNG火力の役割は依然として大きく、電力市場はLNGの需給動向に大きく左右される展開が続く見通し。猛暑や寒波の到来、設備の生産不調による調達環境の変化などが想定されるため、戦略的余剰LNG(SBL)が重要となる。原油市場では、中東情勢やウクライナの動向など地政学リスクに対する警戒が続く見通しだが、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国で構成される「OPECプラス」による減産体制などの動向にも注視が必要だ。発電用石炭では、相次ぐ閉山で供給そのものが減少する流れが続く見通しで、価格は高値を維持するとみられる。なお、米国ではトランプ氏が大統領に再選されたことで、バイデン政権下で制定されたエネルギー政策が根本から覆され、エネルギー環境が様変わりする可能性がある。 25年に営業運転を予定している原子力発電は、中国電力の島根原発2号機(定格出力82万kW、BWR型、島根県松江市)。24年10月に燃料装荷を開始し、25年1月に営業運転を開始する予定。これにより、西日本で原発を稼働している電力会社は、関西電力、四国電力、九州電力に次いで4社目になる。また、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所6号機(定格出力135.6万kW、BWR、新潟県柏崎市)は、25年6月に原子炉へ核燃料を入れる見通しとなっている。ただ、地元新潟県が再稼働に同意していないため、具体的な稼働時期については未定のまま。同6号機は24年9月に再稼働の詳細計画が認可され、保安規定の審査が続いている。一方、同7号機(定格出力135.6万kW 、BWR型、新潟県柏崎市)は、24年4月に燃料装荷を行い、6月までに健全性確認が実施されている。 日本の電力先物市場は、24年12月にインターコンチネンタル取引所(ICE)が新たに参入するなど、25年も一段の取引拡大が見込まれる。先物市場で圧倒的なシェアを持つ欧州エネルギー取引所(EEXで)は、24年の取引実績(11月末時点)が前年の1万8,299GWhのほぼ4倍に伸長。25年2月には会計年度物(4月~翌年3月の受け渡し)を上場する見通しで、EEXの電力先物は流動性がいっそう高まる公算が大きい。東京商品取引所(TOCOM)では、24年に導入した現物市場と先物市場の連携サービスである「JJ-Link」により、ヘッジ会計が認められやすくなるとみられ、先物市場への参入を促す効果が期待されている。 |