どうなる今冬のエネルギー供給2025(2)-LNG LPG
【LPG】 LPGはこの冬、中東、米国いずれの供給も増える見通しだ。石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」に加盟するサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなど有志8か国は、今年4月から自主的な追加減産を段階的に縮小している。8月の増産規模は前月からさらに拡大し、これに伴いLPGの生産も増えると見込まれる。 米国では、主要サプライヤーが自社の輸出能力の拡大を図る。米エナジートランスファーはネダーランドの自社基地の拡張を予定しており、第3四半期にはLPGやエタンの輸出能力が拡大する見通しだ。 一方、米国と中国は5月、双方が課していた追加関税を90日間停止し、税率を引き下げることで合意した。米中貿易戦争が一旦休戦モードとなった後でも、対米輸入品に引き続き課せられた10%の追加関税と今後の関税政策の不透明さは、中国プレーヤーによる米国産LPGの買い気を押し下げる要因となっている。今年後半の供給増加を吸収し、需給がバランスするか否かは、米中間の関係が大きな鍵を握るとみられる。
【LNG】 今冬のLNG需給と価格はどう変化していくのか。先物市場では7月下旬現在、12月~2月限の蘭天然ガス(TTF)市況が12.40ドルを超える水準で推移している。しかし、IEA(国際エネルギー機関)の白川裕アナリストは、実際の価格がこれを下回ると予測する。米国とカナダの新規生産プロジェクトが順調に稼働しているためだ。 需要面でも、近年のLNG相場に大きな影響を与えてきた欧州と中国からの買い気が弱い。欧州はガス在庫の充填目標が緩和されたうえ、足元の積み上げペースも順調。中国は米国との貿易戦争で経済活動が鈍っている。25年のLNG輸入量は前年比で約25%減少しており、この水準が続く見込みだ。「価格が上振れるとすれば、一番は地政学的な影響では」(白川氏)という程度で、需給そのものは弱い材料が並ぶ。 このなか、北東アジア着のスポット相場も今冬、寒さで暖房用需要が強まったとしても、13.00ドルには届かないと白川氏はみており、他の市場関係者からは12.00ドル切れの予想も聞かれた。ただ、北東アジア着のスポット市況リンクでターム販売契約を保有しているトレーダー勢が相場の軟化を防ぐため、ペーパー市場での買いに動く可能性もあるとの見方もある。
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