どうなる今冬のエネルギー供給2025(3)-アジア 石炭
【アジア石油製品】 冬季の北東アジアの暖房用燃料の需給については強弱材料が混在。日本ではENEOSが川崎製油所(日量24万9,100バレル)、出光興産が愛知事業所(日量16万5,000バレル)でそれぞれ11月下旬まで定期修理を予定している。両元売りはこれに備えて国内で在庫の積み上げを進めている。ただ、2025年上半期に製油所の装置トラブルが多発。日本の元売りの中には韓国の自社タンクに在庫を積み上げて冬季に日本に運び込むケースがあるが、装置トラブルの対応によりこの積み上げが遅れるとの指摘もあった。また、元売りの中にはすでに韓国積み品を夏季起こしのターム契約で一定量購入したケースもあり、一部韓国元売りからは「秋季~冬季のSRサイズでのスポット販売の余力は乏しい」との声もあった。一方、気象庁は向こう3カ月(8~10月)の気温は全国的に平年よりも高いと予想。市場関係者の中には、「そのまま暖冬になれば、需要が落ち込む」との懸念を示す声もある。 重油についてはアジアの需給引き締まりが見込みにくいという。発電用としてもLNGや石炭など他エネルギー対比で単価が割高なため買いが見込みにくい。一方、供給面ではナイジェリアのダンゴテ製油所(日量65万バレル)の動向が注目される。同製油所では10月までに残渣油流動接触分解装置(RFCC)の定期修理を終え、同装置の稼働を引き上げる。RFCCの稼働が上昇すれば低硫黄重油の供給が減少、アジア域内へのカーゴ流入量が減少する可能性がありそうだ。
2025年後半の石炭市況は、足元並みの110ドル程度もしくはそれを下回る水準で推移するとの見方が伝えられる。アジア新興国で需要が堅調に推移するとみられる一方、中国では景気後退に伴う電力需要の低下が見込まれている。中国税関によると、同国の今年1~6月の石炭輸入量は、前年同期比11.10%減の2億2,170万2,000トンだった。年後半についても石炭需要は盛り上がりを欠き、同国の通年の輸入量が前年より1億トン程度減少するとの観測も出ている。 インドでは引き続き電力需要が堅調と見られるものの、国内での石炭増産、再生可能エネルギーの普及もあって、国際市場での石炭調達は伸びを欠くとみられている。このほか、環境意識の高まりもあって、欧米などを中心に広い地域でも石炭需要が頭打ちになるとの指摘が聞かれる。さらに近年の暖冬傾向で、暖房用の電力需要が低下しつつあることも、石炭需要後退の一因になりそうだ。
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