液化石油ガス(LPG)の大手元売り4社が卸業者に対する販売価格(仕切り価格)への、モントベルビュー市況の導入を着々と進めている。アストモスエネルギーが今年1月から、ジクシスが4月からそれぞれモントベルビュー市況の採用を始めたのに加え、7月からはENEOSグローブとジャパンガスエナジー(JGE)も、販売価格の内訳にモントベルビュー市況を織り込む予定だ。モントベルビュー市況は米テキサス州で取引されているLPGの価格で、国際市場においても米国産LPGの指標価格として扱われている。大手元売り4社がモントベルビュー市況の採用に関して足並みを揃えることで、日本向けの最大輸出国となった米国産LPGの調達価格を値決めの基準に取り入れる流れは、一段と加速しそうだ。
元売り4社によるプロパンの販売価格はこれまで、サウジアラムコが毎月決定するアラムコCPの前月分と当月分の平均値をベースとしてきた。今後はこの平均値に、モントベルビュー市況の前月分の平均値を加える方式に変更。アラムコCPとモントベルビュー市況の割合は、アラムコCPが7~7.5割、モントベルビュー市況が2.5~3割が基本となる。一方、日本までの航海日数は米国の方が中東に比べて10日ほど長いため、米国産LPGの海上運賃(フレート)は割高だ。そのため、新しい価格体系にはこの割増運賃を見込んだ経費も加算される(表1)。
表1 元売り4社の新仕切り価格体系 (リム調べ)
米国産LPGの輸入量は近年急増しており、今年1~3月における日本のプロパン輸入量の7割弱を占めた(図1)。米国産LPGがすべてモントベルビュー市況に基づいて購入されているわけではないが、国内の販売価格の仕組みを輸入の実態に近づけることで、調達コストの変動リスクを低減することが元売り各社の狙いだ。
図1 仕出し国別 日本のプロパン輸入占有率 2017年1~3月
出所:日本LPガス協会
ただ、モントベルビュー市況とアラムコCPにそれぞれ海上運賃を加算し、極東に到着した時点の価格で比較すると、2016年はモントベルビュー市況で購入したLPGの方が割高に推移していた。そのため、一部の卸業者は今回の価格体系の変更に難色を示している。これに対して元売り勢は、米国産LPGの調達拡大に伴い、アラムコCPが下落した点を強調する(図2)。「米国産LPGの輸入量を増やしたことで、これまで寡占状態にあったサウジアラムコなどの中東勢に国際市場での価格競争を促すことができ、アラムコCPも以前の半値程度に下がった。元売りとしては卸業者の皆さまにこの実績に対するご理解を賜り、さらなる調達ソースの多様化、安定供給に向けてご協力いただきたい」(元売り関係者)。アストモスが2019年以降、エドモントン市況に基づいたカナダ産LPGの輸入を検討するなど、調達元と価格体系は将来的にいっそう多様化することが見込まれている。
図2 モントベルビュー(MB)市況とアラムコCPの比較 (リム調べ)
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