施行直前のIMO規制-Mマースクなどが低硫黄燃料でプロジェクトを設立
国際海事機関(IMO)による船舶燃料にかかわる硫黄分の上限を現行の3.5%から0.5%に制限する規制が2020年1月1日から施行される。これに先立ち、欧州や中国企業を中心に低硫黄船舶用燃料の供給を始めるなど、IMO規制施行への対応に追われている。
海運業界の大手であるデンマークのA.P.モラー・マースクはこれまで、IMO規制を見越し、船舶燃料の低炭素化に取り組んできた。このほど、ノルウェーのライセーカーに本部を置く海運会社のワレニウス・ウィルヘルムセンやコペンハーゲン大学(デンマーク)などと連携し、持続可能な輸送用燃料として注目される、リグニンとエタノールを混合した船舶燃料LEOの使用を目的としたプロジェクト「LEO連合」を立ち上げた。船舶燃料向けLEOの環境性能評価と商業化の可能性に取り組むという。
LEO連合には、独BMWグループ、スウェーデンのH&Mグループ、ジーンズの世界的メーカーであるリーバイ・ストラウス、英マークス&スペンサーも参加する。IMOが2050年までに温室効果ガス(GHG)削減目標で国際海運に総量を半減させるため、マースクは世界産業同盟(GIA)にも参加を表明するなど、一企業・グループだけの領域にとどまらず、企業が横断的に結束することで、ゼロエミッションにつなげようとしている。
このほか、ガンホー・グループが運営するロッテルダム製油所(蘭)とアントワープ製油所(ベルギー)で2020年3月に製油所の総点検を実施し、第2四半期(4~6月)からロッテルダム製油所でIMO規制に適合する硫黄分0.5%以下の燃料油(VLSFO)の供給を開始する方針だ。
他方、中国企業の動きも見逃せない。中国石油化工(SINOPEC)は10月中旬、広東省で低硫黄船舶用重油の供給を開始したと発表。SINOPECの燃料販売事業会社が深圳蛇口造船所でChina LNG Transportation が運営するLNG(液化天然ガス)タンカーに低硫黄船舶燃料を1,800トン分積み込んだことを明らかにした。
このほか、低硫黄船舶燃料ビジネスに関連し、中国国営の浙江省能源集団と仏トタルが事業提携することに合意済みだ。両社は今後、浙江省舟山市に船舶燃料を取り扱う合弁事業を設立し、低硫黄船舶燃料の供給や販売を手がける。低硫黄船舶燃料は寧波、上海両港に供給される見通しで、脱炭素化に向けた世界的な流れの中、こうした動きは今後、さらに本格化するとみられている。