INPEX=インドネシアのアバディLNGプロジェクトにおける改定開発計画
INPEXは4日、シェルとのジョイントベンチャーを代表して、改定開発計画(POD)を政府当局へ提出したと通知した。同社は、政府当局からの改定POD承認後、2020年代後半にFID(最終投資決定)、2030年代初頭での生産開始を目標としてプロジェクトを進めていくという。同社は、子会社INPEXマセラを通じて操業主体を務めるインドネシア共和国アラフラ海マセラ鉱区アバディLNGプロジェクトにおいて、現在の開発計画にCCS(CO2貯留・回収)を新たに追加する改定PODについてインドネシア政府当局と協議を実施してきた。
インドネシアでは、2023年3月に石油ガス事業におけるCCSに関するエネルギー鉱物資源大臣令が制定され、本プロジェクトは同国における石油ガス上流事業の契約枠組みであるProduction Sharing Contract(生産分与契約)のコスト回収*事業として行われる初のCCSプロジェクトとなる見込みだ。
INPEX広報・IRユニット担当者によると、本プロジェクトのLNG年間生産量は日本の年間輸入量の1割強に相当する950万トン規模を想定し、アバディガス田は世界有数の良好なガス田性状および豊富な埋蔵量を有するため効率的な開発が可能であり、ガス田からインドネシア国内外向け天然ガスに付随して産出されるCO2全量を削減できる見通しだという。なお、CO2圧入量は今後精査するほか、具体的な数量は非公開となっている。CCSポイントは地層など地下の状況をみて決定するが、今回は産ガス地点の近くとなる。回収されたCO2はパイプラインでガス生産設備へと輸送する。また、本プロジェクトにより、特にインドネシア東部の経済発展に大きく寄与すると同時に、CCS導入によりインドネシア政府が掲げる2060年までのCO2排出量ネットゼロにも貢献することが期待されている。
*Production Sharing Contract(生産分与契約)のコスト回収:
石油・天然ガス開発会社が、コントラクターとして産油国政府から探鉱・開発のための作業を自身のコスト負担で請け負い、コスト回収分及び報酬を生産物で受け取ることを内容とする契約。石油・天然ガスの生産に至った場合、コントラクターは負担した探鉱・開発コストを生産物(原油・ガス)の一部より回収(コスト回収)し、さらに残余生産物について一定の配分比率に応じて産油国とコントラクターの間で配分する。
インドネシアの石油・天然ガスの開発、生産では、この生産物分与契約も使用されているが、コスト回収の対象については政府の承認が必要であり、このコスト回収の対象が拡大するとコントラクター側はキャッシュフローの改善、経済性の向上につながる。