グリーンカーボン=比国でCO2削減事業を実施へ、4,500万トン規模
カーボンクレジット(炭素クレジット)事業などを手掛けるグリーンカーボン(東京都)はこのほど、フィリピン貿易産業省の開発投資機関であるNDCと、同国の二酸化炭素(CO2)を削減するプロジェクトの基本合意書を締結した。プロジェクトのCO2削減規模は、4,500万トン。CO2の「森林吸収」と「水田管理」によるメタンガス削減、主要作物であるサトウキビなどを用いたCO2の「農地貯留」の3方策により炭素クレジットの創出を展開する。同社の1日の発表によると、フィリピンは現在、約6,000万トンのCO2を排出している。一方、同国は2020年から2030年の間にCO2をはじめとする温室効果ガスの75%削減を目指す。目標達成には約4,500万トンの削減が必要。75%のうち2.71%を自国の努力で達成し、残りの72.29%は先進国からの財務的、技術的支援を受けて達成する計画という。
50万ヘクタールの森林を保護 森林吸収では、熱帯林の保護対策により気候変動を抑制する国際的メカニズム「REDD+」を利用し、新規の植林と再植林、植生回復(ARR)を進め、50万ヘクタールを保護する。REED+では、途上国が森林減少・劣化の抑制により温室効果ガスの排出量を減少させた場合や、森林保全により炭素の蓄積量を維持、増加させた場合、先進国が途上国に対し資金などの経済的支援を実施する。 グリーンカーボンの発表によると、フィリピン国内では年間5万ヘクタールの森林が伐採され、1990年から2020年までの30年間に150万ヘクタールの森林が消失したという。同社は、新しい植林の研究開発も実施し、CO2の削減効果を通常種より1.5倍に高めることを目指す。
間断潅水で水田のメタンガス抑制 グリーンカーボンはフィリピンの全水田の約80%にあたる400万ヘクタールの水田に、「間断潅水(AWD)」を導入し、メタンガスの発生を抑制する。稲の生育を促すために田んぼを強制排水する「中干し」が終わった後、さらに数日おきに水抜きする間断潅水により、水田からのメタンガスの発生が抑えられるという。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、メタンガスの温暖化効果はCO2の28倍。フィリピン国内では、農業により年間4万9,370トンのメタンガスが発生している。 化学肥料の投入量を効率化できる減肥種子や、メタンガスを排出しない稲種子の研究開発にも取り組み、削減効果の上積みを図る。
効率化による農地貯留の促進 農地利用を効率化によるCO2貯留量の増加も図る。休耕でサトウキビを植えていない期間に、別種の植物を植えることで、CO2の貯留量を増やす計画。 このほか、トウモロコシを利用したCO2削減やマングローブの植林による炭素クレジットの創出、ココナッツの樹皮を原料とするバイオ炭の生産、バナナの繊維を活用した紙(バナナペーパー)にも取り組む予定。
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