欧州7カ国=民間主導の炭素クレジット、制度改善策を共同提案
欧州7カ国は、民間主導の炭素クレジット(ボランタリークレジット:VC)市場で見せかけの環境配慮「グリーンウォッシュ」を防止する制度改善策を共同で提案した。11月30日からアラブ首長国連邦(UAE)で国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が開催されている中、オランダとドイツ、フランス、スペイン、フィンランド、ベルギー、オーストリアが12月10日に発表した共同声明の中で示した。 声明ではVCの利用が、脱炭素に向けた行動の加速や、持続可能な開発目標の達成、世界中の気候変動プロジェクトへの経済的支援に貢献すると指摘。その一方で、厳格な基準とセーフガード(CO2削減効果の保全策)の備えがなければ、炭素クレジットの効果が損なわれる危険性があると強調した。VC市場で取引される炭素クレジットの多くが、所定のCO2削減・除去量に裏付けられていないという批判にさらされていること加え、炭素クレジットの低い価格や透明性、制度指針の不備といった点も指摘。こうしたことから、本来CV市場で対応が可能であるにもかかわらず、気候変動に対する最悪の影響を回避するめに緊急に必要な目先のCO2削減が遅れるリスクがあるとした。 7カ国は、VC市場の透明性や高品質なVCを確保するための提案として声明に7項目を盛り込んだ。 (1) 二酸化炭素(CO2)の直接・間接排出量の算定と公表。パリ協定に準拠したCO2削減目標の設定と実行計画の策定 (2) 供給網全体のCO2削減の優先。CO2削減は自主的努力が本来の手段であり、炭素クレジットはあくまでも補完的な方策であることの明確化 (3) 炭素クレジット利用の明示方法の確立と消費者への充分な情報の提供 (4) 炭素クレジットの使用目的の明示: 企業・団体・機関の削減目標達成のため(オフセット・相殺)か、プロジェクト実施国での削減目標に貢献するため(貢献)か (5) 高品質な炭素クレジットの利用: 正確なCO2吸収・削減量を反映し、CO2削減・吸収・除去のプロジェクトにより追加的にCO2が減るという「追加性」と、恒久的にCO2が減るという「永続性」を持つ炭素クレジット。加えて、規制の緩い国で生産・投資が拡大し排出量が増加するという「炭素リーケージ」に対する防止策も施された炭素クレジット (6) プロジェクトが実施される国の環境と社会に対する影響、人権、ジェンダー平等、先住民族や地域住民の権利に対する配慮。炭素クレジットの購入がもたらす持続可能な開発への貢献についての留意 (7) CO2削減目標の達成状況と炭素クレジットの利用に関する透明性の担保と年次ベースの報告書の公開
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