LNG=5月25~29日:DQTの行使で生産者が余剰玉を抱える結果に
【DES北東アジア】 DES北東アジアのスポット相場は軟化した。商いの中心となる7月後半着の相場は1.70~1.85ドルと5月中旬に比べ70~80セント下落した。日露サハリン2プロジェクト(年産1,080万トン)、パプアニューギニアプロジェクト(PNGLNG、同690万トン)出しなど極めて多くのスポット玉が散見された。日本の一部電力会社に加え、中国、韓国および台湾向けにも僅かながらスポット需要が浮上したものの、需給の緩さが目立った。日本の電力会社を始め北東アジアの複数の長期契約者は、DQT(下方数量弾力性)を行使して長期契約玉の引き取りを減らすとともに、長期契約玉の引き取りを遅らたこともあり、サハリンエナジーやPNGLNGなど生産者は、期近なタイミングでより多くの余剰玉を抱える結果となった。
【FOB大西洋圏・DES欧州・その他地域】 DES欧州相場は上値の重い商況が続いた。蘭TTFや英NBPなど欧州の天然ガス相場が低迷した影響を受けた。欧州向けのパイプラインによる天然ガスは、露ガスプロムが管理するヤマルパイプラインによる欧州向けの供給が5月下旬にかけて一時的に減少した。ガスプロムが欧州の天然ガス相場を割安として一時的に供給を絞ったからだ。このため、英NBP先物相場など欧州の天然ガス市況は一時的に強含んだ。しかし、今回の供給減少が設備のトラブルによるものではなく、5月末にかけて供給量が回復したことから、欧州の天然ガス相場もすぐに軟化した。ヤマルパイプラインは、モスクワを起点としてポーランドやドイツなどへロシア産天然ガスを供給している。
【FOB中東、DES南アジアおよび中東】 中東出しの需給は緩さが強まった。カタールガスに加えオマーンLNGが余剰玉の調整に苦慮した。カタールガスは、スポット相場の下落を危惧し、唱えを切り下げスポット販売することを控え、主に長期契約者に対して追加の引き取りを要請した。しかし追加購入に応じる契約者は少なかった。逆に日本や韓国など長期契約者の多くは、不需要期理に加え新型コロナの影響で需要が落ち込んだため、長期契約玉の供給を計画どおり引き取れなくなり、多くが供給の後ろ倒しを要請せざるを得ない状況となった。このためカタールガスは、英サウスフック基地(年間受け入れ能力1,600万トン)など使用権を持つ受入基地での取り込みを強化したが、それでも全ての余剰玉を捌けなかった。 |
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