LNG=4月22~26日:地政学リスク後退で軟化
DES北東アジア相場は先週、期近着が一時9.90~10.20ドルで推移し前の週から下落した。中東の地政学的リスクが後退したためだ。ただ、不安定な米フリーポートプロジェクト(年産1,500万トン)の生産動向が相場を支えている。 イスラエルが4月19日にイランの核施設に攻撃しなかったことを背景に中東情勢のさらなる緊迫化を懸念する声が後退した。イラン側も最高指導者であるハメネイ師が21日、イスラエルに再度の反撃については言及せず、今以上の関係悪化を望まない姿勢をにじませた。日本企業は「イスラエルはパレスチナ自治区ガザ侵攻の最中にイランにも兵力を割かなければいけない状況を作ることに消極的。イランもイスラエルや米国をはじめとした西側諸国と対立を深め、痛手を被りたくないとの姿勢を示している。米国も大統領選を控え、世界情勢の悪化とガソリン価格の上昇を避けたい様子。つまり誰も戦闘を望んでいないため、皆冷静さを保っている」と伝えた。このままイスラエルとイランの対立が沈静化すれば、LNG需給の緩和感が意識されるとみる市場関係者は少なくない。 ただ、米フリーポートプロジェクト(年産1,500万トン)における原料ガスの供給が25日までに再度停止した。先週前半には同プロジェクトの原料ガスの供給量が回復しつつあったことで北東アジアの相場が下落していたものの、ここへきてその弱材料が打ち消されたことになる。「場合によってはフリーポートプロジェクトからの出荷がしばらく停止すると考えたほうがいいかもしれない」(日本企業)との声が寄せられている。日本では、複数の需要家が6月着カーゴの購入を検討しているとみられている。武豊石炭火力発電所の5号機(出力107万kW)が事故で停止した影響で、代替として稼働を引き上げたLNG火力向けに引き続き購入する必要があるもよう。
【FOB中東・DES中東・DES南アジア】 オマーンLNGと仏トタルエナジーズはオマーンのソハール港で計画中のマルサ(Marsa)プロジェクト(年産100万トン)に関する最終投資決定(FID)を行った。マルサプロジェクトは2028年1~3月期にLNG生産を始める見通しで、主に船舶燃料用のLNGを供給する。「オマーンはもともとペルシャ湾の外という立地を活かして、石油のバンカリングを手掛けてきた。今回の契約は当然、今後のLNG燃料船の普及を見込んでのもので、賢い選択だろう」(日本企業)。インドでは、、国営ヒンダスタン石油(HPCL)が運営するインド西部のチャラ(Chhara)基地(年間受入能力500万トン)の本格稼働が10月以降に遅れる公算、との情報が寄せられた。
【FOB大西洋圏・DES欧州・その他地域】 米グレンファーン・エナジー・トランジションと米大手ガス生産者EQTが20年契約で、テキサスLNGプロジェクト(年産400万トン)における年間150万トンのガスの液化業務に関する基本合意書(HOA)を交わした。両社は1月にも、15年契約で年間50万トンの液化業務に関するHOAを交わしている。日本企業は「天然ガスの生産者は国際市場での取引に積極的なため、LNG生産者との関係強化を進めている」と伝えた。
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