LPG=大手元売り5社グリーンLPガス製造実証へ
LPG輸入大手元売り5社のアストモスエネルギー、ENEOSグローブ、ジクシス、ジャパンガスエナジー、岩谷産業は10月18日、LPガスのグリーン化事業を共同で進めることを目的とした、一般社団法人「日本グリーンLPガス推進協議会」を設立した。
グリーンLPガスとは、生産から消費の過程で二酸化炭素(CO2)の排出ゼロを達成するLPガス(液化石油ガス)を指す。2050年カーボンニュートラル実現に向け、エネルギー部門の脱炭素化は欠かせない。LPガスは需要の約4割を占める家庭用をはじめ、工業用、化学原料用など多岐にわたる分野で使用され、可搬性や貯蔵の容易性に利点があることから近年では災害時のエネルギー源としても見直されており、国の試算では2050年時点においても需要の6割が維持される見込みだ。日本グリーンLPガス推進協議会では、この2050年におけるLPガス需要全量のグリーン化を進めて行く方針を示している。
鍵となる2つの新たな技術開発
日本グリーンLPガス推進協議会は今後2つの技術開発を進め、グリーンLPガスの社会実装を目指す。ひとつめは、北九州市立大学客員研究員の藤元薫氏(東京大学名誉教授、一般社団法人HiBD研究所代表、北九州市立大学名誉教授)が基礎研究を進める、LPガスの新たな人工合成技術(プロパネーション・ブタネーション)の確立だ。具体的には水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を原料にメタノールを生産し、LPガスと性質の近いジメチルエーテル(DME)を経由した後、LPガスの成分であるプロパンやブタンに変換させる。これまでの研究結果ではLPガスの収率が8~9割に上ることが分かっているという。
日本LPガス協会が昨年10月から今年3月にかけて、経済産業省や大学研究者などと共同で開いたグリーンLPガスの生産技術開発に向けた研究会(以下、グリーンLPガス研究会)のなかでも、藤元氏の研究は従来の合成技術に比べて高い生産性が期待でき、より低温の環境下で生産可能との点を評価しており、最終報告書では技術開発を加速させる方針を示していた。
協議会が推し進めるもうひとつの研究技術は、DMEからLPガスを製造するための触媒開発だ。DMEは低い圧力で容易に液化するという性質がプロパンやブタンに似ていることから、LPGの代替燃料としての有効性が注目され、製造方法が既に確立している。DMEを原料としてLPガスを獲得する合成技術も実現可能性が高いと評価されており、協議会は大手触媒メーカー等と協力してこの技術開発も進めていく。
2030年代より社会実装開始
日本グリーンLPガス推進協議会は2つの技術開発結果をもとに、まずは2030年までに日量100kgを生産できる実証プラントを建設する。2030年代前半には商用プラントを設置し、年間3万トンのグリーンLPガス製造を目指す。全国の下水処理施設の周辺にプラントを建設し、施設から排出されるバイオガスから原料となるH2とCO2を獲得することで、国内のバイオ資源を最大限有効活用する計画だ。
関係者によると、2050年におけるLPガス需要全量のグリーン化においては、国内での製造だけでなく、海外に製造拠点を構え生産を行うことも視野に入れているという。いずれにしても、この計画によりLPガスの輸入元売りがグリーンLPガス製造業への業態転換に踏み出すことになる。現在、経済産業省所管のエネルギー構造転換分野ワーキンググループでは、CO2等を用いた燃料製造技術のひとつとしてグリーンLPガスが挙げられており、今後の議論により社会実装までのスケジュールや支援する予算が決定される予定だ。