バイオ混合率最大30%のVLSFO価格の気配値は、ロッテルダム渡しで774.00~844.00ドル、バイオ混合率最大24%のVLSFO価格の気配値は、シンガポール渡しで800.00~870.00ドルといずれも先週から急騰した。このところの原油高に伴うVLSFOの価格上昇に加え、供給量の減少で使用済み食用油(UCO)を原料とするFAME(脂肪酸メチルエステル《UCOME》を含む)価格も高騰している。
リムバンカーオイルレポートによると、9日時点の硫黄分0.5%以下のVLSFO価格はロッテルダムで609.00~612.00ドル、シンガポールで630.00~633.00ドル。
欧州域内では、バイオ燃料の原料について、より環境保全を重視した基材の使用が一層求められている。世界初のバイオマス、バイオエネルギーの国際持続可能性カーボン認証制度(ISCC)は、中国から欧州に輸出されたバイオディーゼルなどのバイオ燃料、その生産設備となる水素化処理施設に対して抜き打ち監査を実施した。最大7社で不正が見つかったという。ISCCの発表によると、該当会社は、原料を廃食油と公表したにもかかわらず、実際はパーム油およびパーム椰子殻(PKS)などを用いたバイオ燃料油を供給していた。これらの会社は認証の停止や剥奪の処分を受けた。既報のとおり、6月末にもISCCは別の3社の廃食油供給会社の認証停止を発表したばかり。欧州では認証制度に適した廃食油を含むバイオ燃料の供給減少が著しいようだ。この結果、SAFの販売価格が石油由来の燃料の約5倍で取引されているという。
この他米国では、トウモロコシ由来のエタノールから精製されるSAFが、気候変動対策法案に基づく補助金の対象となる意見が分かれているという。バイオ燃料業界から補助対象となるよう要請が出ている。環境保護団体は、可食由来の燃料を使用したバイオ燃料について、ライフサイクルの観点から環境保全やGHG削減につながらないとの見方を示し、廃食油や動物性油脂などを優遇する措置を求めている。
一方、米中西部のエタノール生産者は行政に対し、エタノールベースのSAFを補助対象とするよう求めている。バイデン政権は2030年までに少なくとも国内で年間30億ガロンのSAF供給を目標に掲げている。
SAFや陸上用バイオディーゼル、舶用燃料油用のバイオバンカーの使用が進む欧州では現在、ライフサイクルの観点で森林破壊に繋がる植物由来のバイオ燃料の使用を控える動きが加速している。環境保護団体のみならず荷主からの意向が大きいほか、より厳格化した環境規制を遵守する流れが強まっている。一方、マレーシアやインドネシアでは欧米向けの輸出が減少し、在庫増加を受けてパーム油価格が下落している。割安感から中国やシンガポールが積極的に輸入を進め、SAFのみならずバイオ燃料の生産を増やしているという。ただし、シンガポールでバイオバンカーを調達する主要な需要家は、原料について注視する船会社が多い。パーム油やPKSの輸入が多いシンガポールでも、FAME由来のバイオバンカーへの買い気が集中している。シンガポールもロッテルダム同様、バイオバンカー価格が高騰した。
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