アドブルー小売動向=フリートSS店頭価格が上昇、物流コスト押し上げ要因
トラックなど大型車両に給油するフリートサービスステーション(FSS)で尿素水アドブルーの店頭価格が上昇した。原料尿素不足を背景とした製造コストの上昇が小売価格を押し上げた形だ。さらに物流コストを押し上げ、食品など一般消費財の価格上昇につながる可能性がある。
全国にFSSを展開する宇佐美グループはアドブルー店頭価格を1月5日からリットルあたり16円引き上げ、全店舗一律124円に設定した。ENEOSウィング、キタセキ、太陽鉱油、エネクスフリートなど別のフリート業者が運営する都内の店舗でも店頭価格が軒並み10~30円ほど切り上がり、117~137円が主流となった。
背景には原料尿素価格の高騰がある。最大生産国の中国による輸出規制などで尿素の国際需給が逼迫、輸入価格が急上昇した。5割程度を輸入尿素に頼るとされるアドブルー製造コストが押し上げられた。
原料不足や採算悪化でアドブルーメーカーが製造工場の稼働を止めるなど生産調整に動いたため、供給が減少し品薄に陥った。FSS店頭でもアドブルー在庫不足による販売休止、販売数量制限などが相次ぎ、物流にも影響が出た。
アドブルーメーカーが原料コストの転嫁を進めたことで、伊藤忠エネクス、三井物産プラスチック、日本液炭、日星産業など大手アドブルー販売業者が21年11月以降、一斉に販売価格を引き上げた。それまで強気の姿勢で売り手の値上げ要求を拒んできた大手フリート業者も値上げを飲まざるを得ない状況に追い込まれた。
大手アドブルーメーカーは、「原料尿素の確保は可能だが、値段が高い。原料コストを製品価格に転嫁できなければ、生産を続けられない」と、値上げの理由を打ち明けた。小売価格の上昇はアドブルーのコスト吸収力を高め、生産増加を促すことにつながる。安定供給には不可欠とも言える。
一方、店頭価格の上昇は運送会社のコスト負担増となり、運送費に跳ね返る。物流コストの上昇はスーパーやコンビニエンスストアなどに運ばれる食品をはじめとした、ありとあらゆる一般消費財の価格を押し上げる要因になる。小売市況の上昇によってアドブルー品薄騒動は、誰しもが無関係ではいられない問題に発展した。
※『CROSSVIEW軽油』第91号(21年12月21日発行)でアドブルー関連記事「伊藤忠エネ値上げ第2弾、原料高を転嫁、三井化学の増産尿素は輸入超え」を掲載しています。