欧州会計監査院=EUのエネルギー自立計画、施策停滞し成果不十分
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欧州会計監査院(ECA)は10日に報告書を公表し、中東情勢の緊張の高まりによりエネルギー安全保障が新たな脅威に直面する中、ロシアからのエネルギー自立を目指す欧州連合(EU)の計画「リパワーEU」が行き詰まりを見せているとの見解を示した。EUがエネルギー自立計画を策定したのは、ロシアがウクライナ侵攻を開始して約3カ月が経過した2022年5月18日。4年を超える時間が経過したが、(1)施策を管理する体制の未整備、(2)支援資金の活用停滞、(3)ロシア産の化石燃料依存から脱却するための柱であるクリーンエネルギーへの移行に必要な投資の不足―といった問題が加盟国間で生じているという。会計監査院は取り組みを強化しなければリパワーEUの目標実現が難しいと警告した。
ロシア産天然ガスは輸入減、一方でLNG増加 ロシア依存脱却の焦点はガス。EUがロシアから輸入する天然ガスは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前の21年が1,530億立方メートルだった。これに対し24年には380億立方メートルへと大幅に減少。ただ、ドイツなど一部加盟国がロシア産ガスの輸入を大幅に削減した一方で、他の加盟国は依然として「無視できない量」のガスを輸入している。 同時に、ロシアからの液化天然ガス(LNG)の輸入量は、21年の120億立方メートルから24年に200億立方メートルに達し67%増えた。欧州委員会のデータによると、一部加盟国では24年に輸入したロシア産ガスが21年を上回る。海上輸送による輸入を原則的に禁止した石油を含めれば全体としてはロシアからのエネルギー輸入は減少しているが、足並みが揃っていない部分もあり、依存脱却が一筋縄ではいかないことがうかがわれる。 輸入減については別の要素も勘案する必要がある。会計監査院は、ロシア産エネルギーの輸入減少には、暖冬が続いたことや、エネルギー価格の高騰による消費減少といった他の要因も寄与していると指摘。リパワーEUの政策効果は当初の印象よりも限定的である可能性があるとみている。
資金利用、支援規模の18%と足踏み状態 会計監査院によると、EU加盟国によるリパワーEUの活用は低調。加盟各国の脱炭素に向けたそれぞれの具体策を示す「国家エネルギー・気候計画(NECP)」は、各国の現場でエネルギー自立を推進するための指針となることが期待されていた。実際には、ほとんどの加盟国が24年6月までに提出したNECPに、リパワーEUを推進するための具体的な行動や数値目標を盛り込まなかったという。会計監査院は加盟国のNECP活用が低調であるため、エネルギー自立に向けた取り組みについて追跡・把握するための管理体制が整っていないと分析する。 欧州委はエネルギー自立計画を推進するため、大規模な補助金と融資枠も用意したが、利用は足踏み状態。取り組みを支援するための枠組み「復興・強靭化ファシリティ(RRF)」で利用可能な総額3,000億ユーロ(約53兆9,000億円)のうち、加盟国が利用したのは今年4月時点で、わずか543億ユーロと全体の18%にとどまる。会計監査院の報告書は、欧州委が用意した3,000億ユーロという支援額が加盟国の投資ニーズに基づいた規模ではなく、マクロ経済モデルに基づいて設定した規模だと指摘し、実需と机上の計算のズレを示唆した。
再エネへ移行の取り組みでも効果は限定的 ロシア産化石燃料からの脱却と対を成すのが、再生可能エネルギーの拡大計画。この面でも思わしい成果が出ていない。報告書は、リパワーEUが再エネへの移行を加速させる効果がこれまでのところほとんどなかったと結論づけた。各国が策定した計画に基づくと、新たに創出された再エネの生産能力は2026年までに20GW(2,000万kW)にとどまり、目標である103GWの20%にも満たない。 太陽光や風力による再エネ電力を大量に取り込む上では、送電網の整備が欠かせないが、この点でも動きが鈍い。欧州委は2023年、再エネ電力の効率的な利用で鍵となる国境をまたいだ送電網の相互接続について、10カ国に対処することを勧告したが、具体的な措置を計画に盛り込んだのは2カ国にとどまった。
(リパワーEU支援資金:予算額と利用額) 図の出所: 欧州会計監査院 報告書「Implementation of the REPowerEU plan needs a boost」 (注: Grants=補助金、Loans=融資、Total=合計、Available funds=予算額、Acutual commitments=利用額、 % acutulal vs available=補助金・融資の利用率、金額の単位=10億ユーロ)
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