記者の眼記者の眼

第301回 (2025年6月18日)

 スーパーに行って米の販売コーナーをみると、商品はまばらで値段は依然として高い。連日のようにテレビや新聞で米騒動が報道されている。フランス革命の時、マリーアントワネットが、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と言ったと伝えられる話は有名だが、米の価格が高くても、パンや芋があると思うので個人的にはそれほど危機感を感じていない。もちろん家族の多い人などは値段の高騰は深刻であろう。

 

 今回の米騒動の背景として、長年にわたる減反政策の結果や流通の問題などが指摘されている。ただ、需要面では少し前までは米の消費の低迷が話題になっていたため、急に米騒動がクローズアップされたことにはいまひとつ釈然としない面もある。

 

 米の価格を引き下げる解決策として、備蓄米の放出に続き、カリフォルニア米などの輸入拡大も選択肢として考えるべきだと報じるメディアもある。偶然にも日米貿易交渉が時期を同じくして行われている。

 

 ただ、米は日本の食生活の中での主食だし、唯一自給可能な穀物である。食料安全保障の面からも、また、日本の食料自給率の維持や小規模農家を保護する必要性からも、米の輸入拡大には慎重であるべきだと思う。今なぜ米騒動なのか考えると、背景に日本の米市場の開放を虎視眈々と狙っている勢力があるのでは、などと邪推してしまう。

 

 記者として市場動向の取材を行っているが、出てきた情報を吟味せずに記事として流すだけでなく、情報の背景もしっかり把握できるようになりたいと思う。

  

  

(高木)

 

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