記者の眼記者の眼

第346回 (2026年5月13日)

 米大統領をこれほど身近に感じられたことが東南アジアで過去にあっただろうか。老弱男女問わず、飲み会、タクシー車中など普通の場で交わされる会話に、米大統領がthat man, a guyの名称でしばしば登場するようになった。「(あいつには)困ったもんだ」、「全くはた迷惑な(やつ)」。燃料価格の急な上昇をもたらす要因を作ったことから、彼は庶民の「身近な存在」になった。筆者が暮らすシンガポールを例にとると、中東での開戦後ガソリン価格(95ロン)は以前より2割高いリットルあたり430円を超える水準に上がった。電気料金も23%値上がりした。

 

 ただ予期せぬ好機も見られる。地球温暖化を誘発する「不都合な真実」に懐疑的な現米大統領の登場以降、環境問題への取り組みは世界的にやや後退、再生可能燃料の推進ムードも弱まった。しかし、今回の中東の混乱による化石燃料の供給不安をきっかけに、東南アジアでバイオ燃料の普及が前倒しで進む格好となっている。ベトナムはE10(バイオエタノール10%混合)、タイはバイオ燃料B20(国産パーム油由来のバイオディーゼルを20%混合)、マレーシアはB15(15%混合)、インドネシアはB50(50%混合)の導入が相次いで決まった。

 

 先ごろ、タイの正月に当たる4月中旬ソンクラーンに首都バンコクで行われた祭りの来場者数が前年の2倍近い495万人に達したと報道された。燃料・物価高による生活苦が取り沙汰されるなか、東南アジア人の活力を見た気がした。

 

(萩本)

 

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