記者の眼記者の眼

第89回 (2020年3月18日)

 最近、日本では「石油トレーダー」の儲け話が聞こえてこない。シンガポール市場では原油や石油製品の羽振りのいい売買が日々報告されているが、国内でトレーダーの職を奪っているのは、内需縮小や輸入玉を搬入するタンク施設の不足の影響が大きいとされる。ところで、「トレーダー」、「ディーラー」、「ブローカー」の違いをご存じだろうか。

 

 これは筆者のイメージだが、石油市場では、現物を売買する者をトレーダー、ディーラーと称している。両者の違いは、大きな数量で現物を溜め込んで売買するのがトレーダーで、比較的短期間に売買を行うのがディーラーだ。先物市場が順ざやを形成している時に、原油をタンカーごと買って期先の先物を売って、その鞘を抜くという手法が代表的なものだ。一方、ディーラーは同月内に市況連動と言われる月間平均値で買って、固定値やプレミアムで売るのが一般的で、売買双方に顧客を持っている。つまり、価格変動リスクを抱えながらも、売買の媒介をしているわけだ。

 

 また、金属市場では液体や気体である石油市場とは違って、倉荷証券が流通しており倉庫を借りる必要がないので、ディーラーが市場で幅を利かしている。たとえば、ロンドン金属取引所(LME)は世界中に指定倉庫を展開、好みの指定倉荷証券を買えば、意図している場所で地金確保が可能になる。その意味では、タンク施設の不足に職を奪われていくのは「石油トレーダー」ということになる。

  

(山田)

 

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