記者の眼記者の眼

第91回 (2020年4月15日)

 一生を通じて人に幸福をもたらすものは何かーを研究した米国医師のスピーチを聞く機会があった。1930年代に10代だった724人を対象に75年間、健康状態を測定し、本人や周辺へのインタビューを通じて仕事や家庭生活を記録し続けた。膨大な情報をもとに出された結論は、「良い人間関係に尽きる」というもの。家族や友達、社会と良い関係性を築けている人は幸福を感じ、健康や脳の状態をも良好にすることが証明されたという内容だった。テーマも結論も決して斬新なものではないが、戦時中も研究の灯を消すまいと奮闘し、4代にも渡る研究者達が導き出した答えには説得力があるように感じた。

 

 興味を惹かれたのは、現在の仕事環境も影響しているのだろう。社内で在宅勤務が実施されて1週間。黙々と仕事に取り組める反面、パソコンとだけ向き合う時間を過ごすのは少し侘しい。その中、我々の仕事の基本である電話取材の有難みを日々感じている。相手も在宅、景気のいい話もさっぱりだが、表情や感情を想像しながらの会話には充実感がある。また、ここだけの話だけど、という前置きで聞く内容や、ノーコメントという一言ですら、声から伝わる情報はリアリティに満ちていて、活きた記事を書きたいと士気が上がるのだ。

 

 我々のレポートが成り立つのも、取材先との良好な関係があるからこそ。レポートも充実し、健康と幸福が得られるのであれば一石二鳥ではないか。そう信じて、今日も取材をするとしよう。

   

(寺内)

 

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