記者の眼記者の眼

第237回 (2024年3月20日)

 実家の電話には自動録音装置が付いている。振り込め詐欺の防止用に市から貸与されたものだが、電池交換は自分でする。メーカーに問い合わせたところ、ホームページを案内され、ここで手が止まってしまったようだ。

 

 説明書によると、一般的なボタン電池を使っている。通販サイトを見るも、送料が高かったり、注文に条件があったりで、これというところがない。検索を続けると、1社だけ送料無料のサイトを見つけた。高々100円の電池を送料無料で購入していいのだろうか、いや売る方がいいと言っているのだから気にすることはないと逡巡する。

 

 ネット通販は今や生活に欠かせないものだが、トラック運転手がいてこそ成り立つ。それも長時間労働に依存している。厚生労働省によれば、令和4年の年間労働時間は全産業平均が2,124時間だったのに対して、中小型トラック運転者が2,570時間、大型トラック運転者が2,568時間だった。4月からは運転手の時間外労働時間が制限される。これにより輸送能力が減少する「2024年問題」が懸念されている。通販は我慢するにしても、ガソリンやプロパンガスの輸送が滞りでもすれば生活に深刻な影響を及ぼす。

 

 電池一つ買うのもスマホで注文をして、宅配を待つ。このような消費者に都合のいいサービスはいつまで続くのだろうか。適切な対価を支払わなければ、どこかで無理が生じる。持続可能な社会に向けて、この機会に誰かにしわ寄せは行っていないか意識する必要がありそうだ。

 

(深水)

 

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