記者の眼記者の眼

第127回 (2021年9月15日)

 

 これは10年以上前の話だが、商品先物市場のテクニカルアナリストにお会いしたことがある。その分析力を拝見すべく、銘柄を伏せたうえであるチャートを見せ、次のように意見を求めた。「このチャートを、テクニカル分析でどのように解析しますか」。その方は即座にそのチャートにトレンドラインや移動平均線などを書き込んだうえで、一つ一つの上下動を詳細に解説することができた。見事と言えた。

 

 だがそのチャート、実は表計算ソフトによる乱数で作った架空のチャートだった。

 

 移動平均線、一目均衡表、相対性強気指数(RSI)、酒田五法など、チャート分析は過去の様々な相場の動きを説明することが可能であったため世に広まり、将来の分析に応用されている。チャート(図表)によって受け手の視覚に訴えやすいことも、広まった一因だろう。ただ、冒頭の話のように、チャート分析は無意味な動きに意味を与えてしまっている可能性は否定できない。

  

 私はチャート分析を否定する気は全くない。むしろ、相場の短期的な予想には極めて有用だと思っている。しかし、商品市場の中長期での方向性を最終的に決定づけるのは需要と供給(ファンダメンタルズ)の関係だ。需給状況はチャートに比べると、受け手に伝わりにくいうえに、詳細に追跡することは容易ではないが、それを伝えるのが記者の使命とも言える。少しでも広く、詳細にそして分かりやすく市場参加者に伝えられるよう、努めていきたい。

  

 

(橋本)

 

このコーナーに対するご意見、ご質問は、記者の眼まで 電話 03-3552-2411 メール info@rim-intelligence.co.jp