記者の眼記者の眼

第172回 (2022年11月16日)

 ロシアのウクライナへの侵攻によりエネルギー市場は混乱をきたし、原油など相場の振れ幅が記録的に大きくなるなか、私達は中立公正な立場で市場価格や需給の出来事を、迅速に且つ正確にお届けすることを使命に日々、記者業務にあたっている。

 

 エキサイティングな市場に身を置き、市場情報をつぶさに伝え続けるなか、ふとある思いが頭をもたげてきた。市場情報に人間模様を織り交ぜて届けることができないかということだ。いつの時も人の心を動かし揺さぶるのは、人の機微に触れた時ではないか。

 

 今夏の高校野球甲子園大会でも人々の心を鷲掴みしたのは、プレーだけではなく球児、その苦労や背負ってきたもの、そこまでたどり着いた道のりへの思いなどが詳らかになった時、心が動いたのではないか。優勝監督の「青春って、すごく密なので」が流行語大賞にノミネートされたことからも、人は人の情動に触れたときに心が動くと感じる。翻ってエネルギー市場でも、市場情報を正確に伝えつつも読者の心を揺り動かすレポートがあってもよいのではないか。

 

 原油を取引するトレーダーの苦悩、天然ガスを販売する人の葛藤や喜び。売買の陰に隠れているものの日々、苦労や悩みがあり、汗をかき涙しながら事にあたっているはずだ。市場情報にそんな人の心の動きを詳らかにして読者へ伝える。ハードルは高いが、いつか人の心を動かす「泣けるマーケットレポート」を発刊してみたいものだ。

 

(柳)

 

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