記者の眼記者の眼

第318回 (2025年10月15日)

 玄関扉を開けると、おびただしい数の蛾に襲われた。どうやらオレンジの暖色光に誘われてやってきたようだ。玄関灯には20匹ほどの黒い蛾が群を成していた。フクラスズメというらしい。開帳1センチ程度と比較的小さく、秋には越冬の準備をするそうだ。そんなことよりも、夕食に注文した唐揚げ弁当を取りに行かなければならない。醤油でシンプルに味付けされた肉厚でジューシーな唐揚げ。殺虫剤を握るには空腹すぎた。

 

 帰宅すると驚いた。一匹のカマキリが蛾を捕食している。地べたには無惨にも、数枚の黒羽が散っていた。これが昆虫界の王様か。玄関前のディナータイムを邪魔してはならない。とりあえず、家に入るのは諦めた。

 

 コンビニでアイスクリームを買って戻ると、すでにカマキリの姿はなかった。いや、よく見ると、カマキリの前腕1本と大翅だけが取り残されているではないか。この数分間に何があったのか。ネコやカラスに襲われたのか。ネズミが持って行ったのか。自然界の厳しさを目の当たりにした。

 

 ヒトは蛾やカマキリやネズミとは異なり、巨大な頭脳と高度な知能をもって、古代から数々の文明を築き上げてきた。紀元前に始まったとされる化石燃料の使用は、これからあと何年続くのだろうか。人類は未来になにを追い求めていくのだろうか。

 

 ぼんやりと物思いにふけっているうちに、とっておきの唐揚げ弁当はすっかり冷めてしまった。空には中秋の名月が輝いていた。

  

(山根)

 

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