記者の眼記者の眼

第223回 (2023年11月29日)

 通勤で自宅から1213分離れたJRの駅を利用している。朝は寝坊が原因でほとんど毎日早歩きだが、夜はゆっくり歩いて思案に暮れている。黄金色の落ち葉が増え始めたある日の帰宅途中、寒空を飛行するカラスを見て、以前住んでいた石川県珠洲市でのエピソードを思い出した。

 

 当時、県は珠洲を含む能登一帯でトキの放鳥を目指して動き始めていた。トキの生息には豊かな土壌やエサが肝心という。農薬の使用を減らす必要もあるそうだ。住民から「農薬を使用しなければ米を育てる負担が増えるほか、収穫量も不安定になる」と危惧する声が聞かれた。行政は無農薬栽培を売りにしたり、トキが舞う地を観光資源にしたりしたい考え。地元の未来や自身の生活、自然との共生を考えるなかで、最適な道筋を探ろうと、腕組みして悩む住民の姿を覚えている。

 

 取材先の方々も商売を前に、悩みは尽きないようだ。「マーケットが乱高下していて、今買うべきか迷っている。どうしよう」と、質問とも独り言ともとれる口調で話す人もいれば、「景気が悪いので」と生気なく話す人も。自身に置き換えても、「このアセスメントで市況を反映できているか」と不安にもなる。

 

 そんなことを考えているうちに自宅近くに。晩ご飯の用意がないことを思い出し、迷った挙句、近くの二郎系ラーメン店の扉を開いた。定期的に食べたくなる濃い目の味で英気を養おう。ニンニクとアブラをトッピングした。このコールに迷いはなかった。

 

 

(櫻井)

 

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