記者の眼記者の眼

第226回 (2023年12月20日)

 早いものでもう師走となり、今年も残すところあとわずかとなった。今年のニュースのうち、私が興味深いと思ったものに、南アフリカで8月に行なわれたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)首脳会議で、新たな加盟を決定したことが挙げられる。20241月からアルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国が加わるという。

 

 これらの諸国は、日々の原油レポートの取材でなじみ深い中国、インドなどのエネルギー消費国に加え、サウジアラビア、イラン、UAEと産油国を含む。エネルギーのみならず、世界経済においてもこれら新興国の存在感が増している。日本を含む主要7カ国(G7)に対抗する勢力になる可能性もあり、米ドルに代わる国際貿易の手段を考えているとの報道もあった。

 

 石油取引は長らく米ドルで行われてきたが、UAEがここにきて石油取引においてドルからの離脱を進めているとの報道があった。この流れが加速すれば、世界の石油市場で長年確立されてきたドルの優位性が後退し、エネルギー分野だけでなく、金融市場においても米国の覇権が揺らぎ、世界経済のパワーバランスに変化をもたらす可能性もある。ただ、米国は石油取引におけるドル離れを阻止するため、あらゆる手段を講じると思われ、今後の紆余曲折も予想される。来年は石油貿易が岐路に差し掛かる1年になるかもしれないと感じている。

 

 

(高木)

 

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