記者の眼記者の眼

第126回 (2021年9月1日)

 

 松本零士先生の作品で「銀河鉄道999」という漫画がある。主人公の星野鉄郎が謎の美女メーテルと機械の体をタダでくれる星へ旅をするというストーリーで、懐かしさに共感してくれる方もいると思う。現在、テレビ神奈川でアニメを再放送しているのだが、「二重惑星のラーラ」という人間が完全に機械化した星で、中和剤を飲み忘れたメーテルが水素中毒で倒れるという場面があった。

 

 機械人間の動力は水素だった。子供のころは全く気にも留めなかったが、松本先生の慧眼に驚かされる。未来のエネルギーとして水素をこんな風に描いていたとは。

 

 さて、カーボンニュートラルの旗手として、とりわけ資源の乏しい日本では水素に対する思い入れは強い。昨年1225日、政府が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表したことを受け、いやが上にも盛り上がりを見せた。しかし、このところ、ちょっとトーンが下がってきたように感じる。

 

 「そうなんですよね」。とある取材先が言う。「新型コロナがこんなに長引くとは思わなくて、地方自治体なんかは、再生エネルギーどころじゃないと、話しづらい空気がある」という。

 

 ここでもコロナか。確かに感染対策は喫緊の課題だ。しかし、中長期的には水素を含めた再エネ問題は、昨今の気候変動を含めて国連でも取り上げられており、世界的に避けて通れなくなっている。機械人間が現れるまで、とは言わないが、水素は息の長い取材を続けていきたい。

 

 

(工藤)

 

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