第347回 (2026年5月20日)
「何をいまさら...」
中東紛争によるエネルギー危機の状況が連日報じられるなか、テレビではゲスト解説者が入れ代わり立ち代わり分析と提言を述べている。その中で目立つのが、「日本は中東産原油への依存度を引き下げ、調達先を多様化すべきだ」とするコメントだ。いかにももっともらしいが、原油ビジネスの実態を踏まえた発言とは言い難い。冒頭の言葉は、そうした浅い議論を耳にした際の率直な違和感である。
そもそも、中東依存低減の議論は今に始まったものではない。1970年代のオイルショック以降、湾岸危機やイラク戦争など供給不安のたびに繰り返されてきた。それでも依存度は90%台を維持したままである。この現実こそが、問題の本質を物語っている。
理由は単純である。中東産原油が圧倒的に安いからだ。調達の最前線ではコスト最小化が至上命題であり、安価な中東産に依存せざるを得ない構造が生まれるのは当然だ。その結果として、日本は長年にわたり比較的安価な石油の恩恵を享受してきた側面も否定できない。「長期安定供給」といった美辞麗句は、トレーディングという世界の現場では建前に過ぎない。
一方、調達原油の多様化には輸送費増や製油所改修などの膨大なコストが伴う。こうした現実とそれを受け入れる覚悟に踏み込まずに語られる提言が多い点は見過ごせない。ニュースに接する際には、こうした点まで踏み込んで説明されているかを見極める視点が受け手に求められる。
(橋本)

