記者の眼記者の眼

第218回 (2023年10月25日)

 幼少期にレゴブロックで遊んだ男の子は多いかもしれない。アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合樹脂(ABS樹脂)で作られているこの玩具について、メーカーであるLEGO(デンマーク)はリサイクルペットボトルからの生産を検討していたが、これを断念したと9月下旬に発表した。必要な性能を備えたブロックの生産時に、当初見込みよりも多い二酸化炭素(CO2)を排出することが分かったようだ。今後は他の樹脂からのリサイクルや、E-メタノールを原料としたレゴブロックの生産に移行することを検討する。

 

 ちなみに、Eーメタノールは再生可能エネルギー由来の電力を利用して製造されるグリーン水素、バイオマス由来のグリーンCO2から合成される。環境に優しい素材で玩具を作るために検討されているサプライチェーンは、なんと長大なことか。

 

 環境負荷をかけ多額の資金を投じて建設された新たな設備から、従来より環境負荷の低い燃料や製品が生産される。その関係は、禍福のごとく不可分で、住宅ローンのように悩ましい。

 

 毎年繰り返される猛暑、洪水などの気候変動への対応は世界共通の課題で、環境のための設備投資は世界中でメリットを享受できることは明白だ。しかし、何百年を経ても価値観の相違を克服できない世界において、貧富の差を踏まえた平等なコスト負担は可能か。願わくは納得のできる答えを得て、世界の多くの子供たちが安心して玩具で遊べる社会が続かんことを。

 

(北村)

 

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