記者の眼記者の眼

第309回 (2025年8月13日)

 シンガポールの乗用車の新車販売で電気自動車(EVElectric Vehicle)の売れ行きが好調だ。2024年新車登録は中国メーカーBYDが全体の14.4%を占める6,191台となり初めて首位を獲得、話題となった。2023年は1,416台だった。BYD2025年に入っても、新車登録のトップブランドを維持しているという。EV全体の販売も良好で、202513月期の新車登録は全体の40.2%を占める4,383台となった。このうちBYD2,183台と、テスラの413台、BMW361台を圧倒した。

 

 EV普及が進んでいるのは、政府の後押しがあるからだ。乗用車の場合、新車購入時に税制優遇措置として最大4万シンガポールドル(460万円、以下ドル)が還元される。シンガポールの自動車購入価格が高額なのは世界的に有名で、乗用車は1台当たり通常18万ドル以上になることが多い。EVだと優遇措置により15万ドルくらいから買うことができる。さらに政府が充電施設の拡充を積極的に努めている影響も大きい。コンドミニアムなどの住宅は、充電装置1台につき3,000ドルを上限に補助金が支給されるという。

 

 ただ市街で走る車を見ると、EVが本格的に他種を圧倒しそうな感じはない。商用車のほとんどはガソリン車だからだ。シンガポールのタクシーに乗ると、乗客の好悪に関係なく好きな音楽を聴いたり、話をしたりする運転手が多い。話好きのある運転手は「(我々は)EV充電に30分や1時間は費やせない。時は金なりだからね。今選ぶとしたらハイブリッド車かな」。

  

(萩本)

 

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