記者の眼記者の眼

第169回 (2022年10月26日)

 潮目が変わる瞬間を人は何度人生で経験するだろうか。入学、就職、結婚、出産などの節目をきっかけに人生の潮目が変わる人も多いだろう。では、業界の潮目の変わる瞬間、関係者の行動はどのように変容するだろうか。

 

 104日からシンガポールで行われたバンカー油の国際会議SIBCONに参加した際、海運業界の潮目が変わると感じた瞬間を体験した。従来の石油由来の燃料油からLNGバンカリングの普及が次第に進み、ついに関係者はバイオバンカーについて口にし始めたのだ。それが当然の流れになるように。

 

 バイオバンカーは現状、多くの海運関係者を脱炭素化社会に誘う救世主のように見られている。既存の陸上タンク、艀、本船タンクの利用など、初期投資は他の次世代燃料といわれるLNG、水素、メタノール、アンモニアなどよりはるかに少ないと考えられる。一方、バイオ燃料は航空機への導入も図られ、すべてのバイオ燃料が船舶向けとなる可能性は低い。また、異常気象に伴う農作物被害が頻発する昨今、食用油の供給も綱渡りだ。燃料油の原料にもなる使用済み食用油のタイト感も浮上。バイオバンカーは従来のバンカー油より高値になる可能性が高い。

 

 潮目が変わる瞬間、人は新たな流れに取り残されないよう懸命に情報を集める。私はメディアに従事する人間として、中立的な立場で、多角的な視点で物事を見ることの重要さを心に留めておきたい。業界の潮目の変化を敏感に感じながら情報発信を続けたい。

 

(山岡)

 

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