記者の眼記者の眼

第305回 (2025年7月16日)

 

 シェルターの時代、夏をご安全に

 

 シェルターといえば、まず思い浮かぶのは核兵器だった。最近はその他の分野でもシェルターが普及し、重要な役割を担う。各種のシェルターが守るのは、家庭内暴力やストーカー行為の被害者、ホームレス、虐待や貧困などで帰る家を失った子供、難民などといった人々。飼い主のいない犬や猫のためのシェルターもある。多様なシェルターの存在自体が現代社会のリスクや病巣を端的に示す。

  

 日本は気候変動でもシェルターが必要になった。暑熱はもはや適切な対策が不可欠な災害リスクだ。改正気候変動適応法が昨年4月に施行され、熱中症の危険性が極めて高くなった場合、「熱中症特別警戒アラート」が発表されることになった。運用の基準は、夏になるとよく見聞きする「熱中症警戒アラート」よりも危険度が高い。特別警戒アラートが発表されると、その地域の市町村長は公民館や図書館など冷房設備を有する「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」を住民に開放する段取り。今年77日現在、幸いなことに実際に運用されたことはない。

  

 東京都の場合、616日時点でクーリングシェルターは1,729カ所。ただ、収容数は充分か、夜中に利用できるのか...などといった疑問もわく。いずれにしろ暑熱対策はこれからも進化するだろう。夏季は「暑いですね」などというフレーズが挨拶の決まり文句だが、製造業などの始業時にお馴染みの「ご安全に」の方が似つかわしい時代になりつつあるようだ。

 

 

  

  

(戸塚)

 

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