記者の眼記者の眼

第177回 (2022年12月21日)

 「絵画の保護と地球や人類の保護と、どちらが重要なのか」。欧州では環境活動家が芸術品を襲撃するいわゆる「エコテロリズム」が相次いでいる。ダ・ヴィンチの名画『モナ・リザ』、ゴッホの『ひまわり』、クリムトの『生と死』などがすでに襲撃された。ガラスで保護がされていたため無事であったが、抗議活動が過激化している。

 

 私は大学時代に「美術」を専攻していたから、この問題に対してはどうしても敏感に反応してしまう。上記の質問をされれば「絵画の保護」と答えたいが、もちろん地球や人類の保護も重要だ。ただ、各国が脱炭素化で足並みを揃えるなか、こうした抗議活動が足かせになっている。日本では過激な抗議活動は見られないが、「化石賞」を受賞した日本は標的にされかねない。

 

 エコテロリズムへの処方箋を考えると、諸外国に「現実的な脱炭素化」を提案していくことではないだろうか。実際、日本には高い発電効率と環境性能を誇る世界初の「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)」という最新鋭の技術があり、2019年頃から実証事業に着手するなど、CO2排出量抑制に対して多大な努力をしている。

 

 私は電力の記者として発電所動向を発信している。最近は廃止予定だったある石油火力発電所の廃止時期を延期。エネルギー安定供給に向けて、野心的な脱炭素化を見直す動きがみられる。

 

 芸術品に罪はない。環境活動家による過激な抗議活動が無くなることを切に願いたい。

 

(青山)

 

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