第299回 (2025年6月4日)
2025年、「5の年」はやはり波乱の幕開けとなった。1月、トランプ氏が米国大統領に就任。4年ぶりの政権復帰に世界はざわめき、保護主義を掲げる彼は就任早々、急進的な関税政策を打ち出した。世界の通商秩序には再び緊張が走っている。
こうした動きはエネルギー市場にも波及する。関税強化は、一見すると輸送や設備コストの上昇を招き、エネルギー価格を押し上げる要因に思える。しかし現実には、世界経済の減速懸念が強まり、原油やLNGなどの価格には下押し圧力がかかった。2018~2019年の米中関税合戦以上に、先行きの見通しは困難を極める。
一方で、供給側の不安も無視できない。トランプ政権はウクライナや中東の緊張緩和に動くが、各国の利害は複雑に絡み、解決の糸口は見えない。こうした混迷が地政学リスクを高め、海上輸送費の高騰を招く懸念もある。とりわけ、中国船籍に対する法外な入港税をめぐっては、船主や荷主の警戒感が強まり、市場の注目が集まっている。
歴史を振り返れば、「5の年」は常に転換点だった。1945年の終戦、1985年のプラザ合意、1995年の阪神淡路大震災とオウム事件。そして2025年もまた、世界秩序とエネルギーの安定を問い直す年として記憶されるかもしれない。私たちはまた1つ、歴史の節目を迎えている。
(志賀)