記者の眼記者の眼

第323回 (2025年11月19日)

 2019年、東京写真美術館でひとつの写真展を観た。写真家は志賀理江子氏。2008年から宮城県名取市を拠点に地域の祭事を写真で記録し、個人の記憶や経験を口述で伝えるオーラルヒストリーの作成にも取り組んできた。写真展の題名は「ヒューマンスプリング」。東北地方の長く厳しい冬を打ち破って訪れる「春」に、強い生の息吹を感じたことに着想を得た。志賀は東日本大震災を経て、「人間とは何なのか」という大きな題材と向き合うために「春」を精神医学や地域関係者との対話からも深く考察している。

 

 111112日にリム情報開発が都内で開催したエネルギーセミナー「リム・エネルギー・アゴラ」の中で、日本BCPの中井正孝取締役が行った「災害対応の現場経験からお伝えする災害時の現場で起きること」という講演が強く印象に残った。災害大国である日本で、しばしば大きな損傷を受けるエネルギーインフラ。被災者のため重機用の軽油や暖房用の灯油、発電用の重油などを時には手運びで給油する場面が目に焼き付いた。特に東日本大震災の映像では当時のエネルギー供給の逼迫が思い起こされた。

 

 液体である石油は運搬や貯蔵時に優れた性能を持ち、エネルギー供給の「最後の砦」と言われる。昨今は石油価格の高騰、それを抑えるための政府の燃料油補助金支給、暫定税率の廃止など様々な動きが出ている。冬季中に安定した供給と市場が維持され、必要な消費者にエネルギーが行き渡ること、そして無事にまた春が迎えられることを願って止まない。

 

(和気)

 

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