記者の眼記者の眼

第342回 (2026年4月8日)

 コメ、いい塩梅はどこに

 

 10年以上前、海外で働いた経験のある知人に自炊の話を聞いたことがある。滞在地はロンドン。若年ながら感心なことに、きちんとごはんを炊いて食事を作っていたという。ただ、日本人に馴染み深い短粒種のコメが現地では、一種の高級品。当時の知人にとってはいささか手の届きにくい価格だった。

 

そこで知人は比較的安価な長粒種とブレンドして炊くことにした。細長いコメでかさ増しするが、粘り気と甘みのある短粒種の風味を生かした仕上がりを目指した。しばらくの間、いろいろ試し、短粒種の持ち味を消さないですむ、長粒種の最大限の混合比率という「いい塩梅」にたどり着けたらしい。

 

 今は日本でコメが高い。今年2月の小売価格の平均は4,131(5キログラムあたり)と、前月比で117円低下した。しかし、2年前の2月と比べれば2,102円高と2倍の水準。消費者は割高感を払拭しづらい。一方で、安くなりすぎれば生産者が苦しい。しかも昨今、イラン情勢の緊張によるエネルギー価格の高騰も加わり、いい塩梅の価格をみつけることは益々難しくなりそう。

 

 和食が2013年、ユネスコ無形文化遺産に登録された。短粒種は言わば和食の中心。和食の国際化が進み、コメの輸出拡大につながれば喜ばしい限り。裏腹に日本のコメ消費量は、じり貧状態にある。コメの消費者利益と生産者利益の塩梅を上手に整えなければ、日本ではせっかくの文化遺産もその基盤がやせ細ってしまいそうだ。

 

(戸塚)

 

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