記者の眼記者の眼

第326回 (2025年12月10日)

 与野党協議の結果、ガソリン暫定税率廃止が決まり、年明けからガソリンに投入されてきた補助金も廃止される。

 

 燃料油価格の激変緩和策として2022年1月から始まった補助金制度は、市場関係者に大きな影響を与えた。その1つが「相場は変動しない」という意識だろう。価格高騰を補助金で抑制し、卸価格や小売価格を一定水準に落ち着かせれば、どこかで歪みも出る。その顕著な例が先物市場の衰退だ。相場が変動しないため先物価格の意味が薄れ、市場関係者は離れていった。東商取バージガソリンや灯油はその典型で、日々の出来高は無に等しく、受渡しもここ数年ない。

 

 先物市場の存在価値を教科書的に言えば、「価格変動リスクの回避」、「価格発見機能」、「投機」の3つが挙げられる。人は先が読めない将来に少しでも安心が欲しく、疑心暗鬼な心に灯される一筋の光が欲しく、一方でそんな不安な心にこそお宝が眠っていると信じる人もいる、だろうか。

 

 筆者が若手記者として各種先物相場を取材していたころ、当時の上司や商社マンからよく言われた言葉は今でも生きている。それが「さやの変化は相場の変化」だ。さやとは、2つの価格差、あるいは限月格差とも言い換えられる。ベーシス、スプレッド、クラック、言い方はいろいろだが、モノの価格差が変わる時、市場関係者は目を見開き、時に細め、そして目線が鋭くなる。先物市場が衰退した今、市場関係者の目線はどことなく優しい。

 

(阿部)

 

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