記者の眼記者の眼

第302回 (2025年6月25日)

 最近、友人との飲み会の席上、脱炭素化についての話題が盛り上がった。私の住んでいるシンガポールでは、政府が脱炭素化に向けた対策を積極的に取っている。

 

 電力供給面では、天然ガスが発電燃料の90%以上を占めている。天然ガスは石油や石炭より二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく、化石燃料から再生可能エネルギーや他の低炭素エネルギーに移行する過程で、「トランジションエネルギー」として広く認識されている。また、太陽光発電にも力を入れており、建物の屋上に多くの太陽光発電パネルを設置している。

 

 陸上輸送においては、2040年までにガソリンやディーゼル燃料を使用する内燃機関車を廃止する。実際、2511日以降、ディーゼル乗用車およびタクシーの新車登録ができなくなっている。

 

 航空輸送については、フィンランドのエネルギー企業ネステが、シンガポールで世界最大の持続可能な航空燃料(SAF)製造設備を操業している。この設備からシンガポール航空が、24年に初めてSAFの調達を受けた。政府は26年から、シンガポールを出発するすべての航空便にSAFの使用を義務付ける予定だ。

 

 海運分野では、世界最大の船舶用燃料油(バンカー)の供給拠点であるシンガポールは、従来のバンカー燃料に加え、液化天然ガス(LNG)バンカーやバイオバンカーも供給している。天然資源のない小さな島国ではあるが、独自の方法で脱炭素化を推進している。

  

  

(シンガポール:チーセン)

 

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